八月のご挨拶 マントラとヤントラ またまた目からウロコ 久司典夫さんからのメッセージ



マントラとヤントラ

 マントラは日本語では真言とも言いますが、すなわち音のこと。ヤントラは聖なるシンボルのことで、すなわち形です。

 マントラという神聖な音の組み合わせと神聖なシンボルとの関係を見てみましょう。それにはサイマティクス(波形形態学)という研究分野が非常に役に立ちます。

次は以下のサイトからの引用です。
http://mandalaya.com/kuma.html


 1809年ドイツの科学者・エルンスト・クラドニは、薄く砂をまいた皿のそばでバイオリンを弾き、砂が複雑な幾何学模様を描く事で、「音波は物体を動かす」ということを証明しました。

スイスの科学者・ハンス・イエニー博士は、薄い金属板の上にさまざまな周波数の音を発生させ、液体、固体、粉末などさまざまな周波数が与える影響を実験し、クラドニの実験を検証し、トノスコープを使って映像化しました。

 この実験は、「音」が物質に秩序を与え、あるいは物質の秩序を変えて、物質の一定の形を維持したり、三次元的な形を作り出したり、一定の周期を生み出す働きがあることを示しました。音の周波数によっては樹状パターン、つまり自然界や人体の気管支、血管走行などに認められる、フラクタル・パターンが形成されることも示しました。


註。フラクタル:複雑系の科学では、巨大な複雑な形もよく観察すると同じ形(樹枝形状=フラクタル)が秩序を保って連続した形状を作っていることを発見しました


もうひとつこの研究に関するサイトを見つけました。
http://www.bekkoame.ne.jp/~topos/sinpigaku/katachi2.html


中村雄二郎「かたちのオデッセイ」(岩波書店)

 この本には全編に渡って、形態、振動、リズムなどがとりあげられています。このなかから、有名なクラードニ図形、そしてイェンニのトノスコープ、スーザン・ダージェスのビデオ作品についてのところをご紹介してみることにしましょう。

 さて、<振動学>の古典的な実験としては、すでにドイツの物理学者で音楽家でもあったエルネスト・クラードニ(1756−1872)が行った砂の振動についての実験がある。クラードニは、金属板の上に混ざりもののない砂を撒き、ヴァイオリンの弓で縁を擦ってその金属板を振動させた。すると振動が砂粒を波腹から結節線へ運び、砂は振動に応じて身毎は幾何学的な対称図形を描くのである。いわゆる<クラードニ図形>である。(中略)

イェンニが使っている別の装置は<トノスコープ>(音を見る器械)と呼ばれる。これは、人間の音声を、なんら特別の電気振動回路を使わずに、振動板上の砂、粉、液体などにそれが残す(形態や図形)として捉える働きをする。ここに痕跡がはっきりとあらわれるのは母音の発声であり、音の高さ、話し手の声の特色も痕跡の形態や図形のうちに示される。したがってこのトノスコープは、聾唖者の発声の訓練に役立たせることができる。

 トノスコープは電気振動回路を使って精緻化すれば、音声だけではなく複雑な音楽も視覚化することができる。音響パターンは、リズムや音量だけではなくそれらを励起する振動数のスペクトルまで、直接水の上に描き出される。これらの音響パターンはオーケストラ音楽の場合には、並外れた複雑さをもったものになる。イェンニは、バッハやモーツァルトのいろいろな曲をこの装置を使って視覚化している。(中略)

その方向でいっそう成果を挙げたのは(中略)スーザン・ダージェスのビデオ作品「ヘルメティカII」(1989)である。この作品で、彼女は、水銀粒に低周波の振動をかけたときに生じる形態の出現と変化を、実に興味深い仕方で映像化した。

 というのも、そこでは0ヘルツから3000ヘルツまでの振動が加えられるに応じて水銀が、円形から出発して、二角形、三角形、四角形、五角形、七角形、二十角形、四十角形という八つの形態をとるのが同時に見られ、しかも移行の動きがわかるように作られているからである。中心から等距離に配置されたこれら八つの水銀流の運動のうち、私にとってとくに面白かったのは、九ヘルツ前後で三角形が生ずること、その三角形が四角形に移行する過程で、逆三角形と重なることであった。
このような形をどこかで見たと思ったら、ヒンドゥ教のヤントラ(マンダラの原型)の基本形であったのである。(それはまたユダヤの星のかたちでもある)(中略)通常、視覚的なイメージの配置として捉えられているマンダラの原型は、音声的・振動的なものであり、そのことは仏や菩薩の姿でなく音あるいは響きをマンダラ状に描いたヤントラのうちにあらわれていることを明らかにした。


 インドの伝統では音が作る形に神々の名前をつけてそれぞれの徳力に応じてお願い事をするなどを日常的に行っています。以下のサイトでインドの神々を象徴するヤントラをいくつか紹介しています。


http://www.bhagavati.de/yindexj.htm


他にもこんなサイトがあります。
http://www.crystalian.com/Shop/about_baionyoku_1.html以下は抜粋。



マントラの音が曼荼羅を描く


 クリスタルボウルの中に水を張り、ボウルの縁をスティックで静かにこすって行くと、やがて水面にさざなみが生じ、その波が美しく複雑な模様を描きはじめる。さらにこすりつづけると、模様を描く水のエネルギーはますます活動性を高め、あたかも沸騰しているように水面から無数の水滴を撥ね上げて、その高さは30センチ以上にも達する。ボウルが発する倍音を全身に浴びる人間の細胞ひとつひとつの中でもおなじことが起こっていると思うと、何か気が遠くなりそうな、いっそこの身を宇宙の摂理に捧げてしまいたいという切ない感情が湧いてくるのはぼくだけだろうか。

 17世紀ドイツの科学者クラドニは、台上に固定した皿に薄く砂をまき、その皿のそばでバイオリンを弾くという実験を公開した。音の進行につれて砂が複雑な幾何学模様を描きはじめるのを見て、実験に立ち会っていたナポレオンも驚いたという。

 現代のテクノロジーを使ってクラドニの実験を追試したスイスの科学者イェーニは、トノスコープという装置で砂、鉄分、プラスチック微粒子、水銀などが音波によって万華鏡さながらの複雑な模様を描くところを映像に記録している。マントラの「オーム」を唱えたときなどは、まるで曼荼羅のように。完全な円の中に、中心に向かって何重もの菱形の層が出現したという。


次は外国のサイトから
http://s010600e029332f52.ss.shawcable.net/circles/cymatics.html

左は母音”A”を発音すると出来る形。
これは”OM”(オーム)を発音すると出来る形
Sri Yantra(シュリ・ヤントラ)



次のサイトから抜粋した文。
http://www.hyattcarter.com/path_of_sound.htm

 In Hans Jenny's tonoscope experiments the sounding of 'OM' produces the circle O which is then filled in with concentric squares and triangles, finally producing (when last traces of sound have died away) the geometric expression of sacred vibration found in many world religions

 ハンス・イエンニによれば「オーム」という音は始めに円を作り、次に正方形と三角形を作り、オームの最後の音の余韻部分に入るとこのような幾何的図形が出来あがったという実験結果を報告している。

 In his research with the tonoscope, Jenny noticed that when the vowels of the ancient languages of Hebrew and Sanskrit were pronounced, the sand took the shape of the written symbols for these vowels. Experimentation with modern languages general produced chaos. Is it possible that the ancient Hebrews and Indians knew this? Could there be something to the concept of "sacred language?" Would other sacred languages produce similar results i.e. Tibetan, Egyptian or Chinese. These languages have always proposed that they have the capacity to influence and transform physical reality through the recitation or chanting of sacred syllables and mantras.

 イエンニはさらに研究を進めた結果、古代のヘブライ語やサンスクリット語の母音を発音すると(聖なる)シンボルが形作られるのに対し、現代の言語(訳注。おそらく印欧語であって日本語ではない)で話すと混乱した形しか出来ないことも発表している。ヘブライ語とサンスクリット語の他にも、古代チベット語、エジプト語、あるいは中国語の聖なるマントラもまた同様のシンボルを作ることも発見した。

(翻訳:静流)。