エッセイ

Vol.08

あなたは、主人公

あなたは、主人公

 私たちは物心ついたときから「自我(エゴ)」が「自分」と思って大きくなりました。そして自分は「肉体」であり「思考」であり「感情」と信じたために、このうちのいずれかが否定されたり傷つけられたりすると、悲しみを覚え、怒りがこみ上げるようになったんですね。

 肉体・思考・感情を守ることに自我は躍起になりますが、問題は、片ときも現状に満足しないこと。それで四六時中、「ほかの人を見てよ。このままでいいわけないじゃない」「何もしなかったら、もっとひどい目に遭うよ」「これ以上、みじめになりたくないでしょう?」と訴えてきます。

 自我から強烈にアピールされると、よりよい未来のためにがんばるのはいいことだと信じて疑わない私たちは、簡単に頭と心を乗っ取られてしまいます。結果、たえず不安に追い立てられ、「ありのままの自分を受け入れられない」という自己否定の感情や、「自分はダメな人間」という自己肯定感の低さに悩むようになるんです。

 もし、あなたが自分もそうかもしれないナと思ったら、「今というときは、よりよい未来のためにある」という考えをいったん横に置きませんか。今という時間を欠乏感を埋める≠スめに使わないで、今あるものに満足してあるがままの自分を認める℃條ヤに使いましょう。

 今に心があるとき、自我は口を出せません。自我は存在できないんです。そこに現れるのが「主人公」である「本来の自分」です。あなたの正体は「自我」ではなく、生まれたときから気づかなかっただけで、片ときも離れたことのない「主人公」なんです。

 主人公は、もともとは仏教用語で自我を超越した自分≠ニいう意味です。瞑想や坐禅は、心を鎮めて自我を超越して主人公に還る試みなのです。現代の「ドラマの主人公」という使い方はまったくニュアンスが違いますので、念のため。

 自我は肉体があるあいだは消滅しませんから、手なずけるしかありません。私はこの歳になって、ようやく自我と仲良しになれたような気がします。ポイントは、常に客観視して、呑み込まれないようにすること。無視しようとすると暴れるので気をつけましょう。

 たとえば、ベッドで目が覚めたとたんに考えを巡らせる自我に、「今日も朝から元気だねー」と笑いかける。「頭にきた」と被害者意識満々の自我に、「わかる、気持ちわかるよー」と共感して終了する。「こんなんで満足なの?」と脅してくる自我に、「満足だよ!自分の正体がわかったから」と冷静に応じて何もしない、等々。

 最近では、自我を味方につける術も覚えました。何か不満を訴えてきたら、「エゴちゃん、かわいい!」って言うんです。すると、見過ごしていた本音とか、体調不良に気づかせてくれることがあります。

 自我はけして悪者ではないんですね。自分を守ろうとして自己主張してくる気の弱い自分・・・感覚的には4歳児くらいの幼子のような存在・・・。その子を「エゴちゃん」と呼んで、「何事にも深刻にならず、真剣に楽しむ」をモットーに一つ屋根の下で暮らしています。(笑) 



ゆりりんのブログ『ありのまま、なるがまま』

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Last Updated: 2022/08/07