エッセイ

Vol.06

何者でもない自分

何者でもない自分

「あなたは誰ですか?」と聞かれたら、あなたは何と答えるでしょうか。名前や住所ですか? 今の仕事や経歴ですか? それとも年齢や家族のことですか? たいていの人は、まず“社会的な自分”を語ると思います。

 それもそのはず。私たちは無意識に社会的な自分を自分だと思って生きているからです。でもそうやって過ごすうちに、社会的な顔を置いた自分、つまり“何者でもない自分”の存在を忘れてしまうんですね。忘れてはいなくても、ないがしろにしている人は多々いるような気がします。

 誰もが「社会的な顔」をいくつも持っていて、それを心理学ではペルソナ(仮面)と呼びます。家族間を例にとっても、親、子供、妻、嫁など、立場に応じた顔を無意識に使い分けています。職場では、上司、部下、営業用の顔、ほかにもご近所用の顔や、父兄用の顔もあるかもしれません。

 社会においてさまざまな人間関係を円滑に運ぶために仮面は有効、と配慮して使い分けている人は、常に自分を客観視する余裕があるので問題ありません。きっと上手に息抜きもしているでしょう。

 問題は、仮面をつけた自分を“真の自分”と信じ込んでしまった人です。もしあなたに、少しでも「人生がつまらない」「生きるのがつらい」という思いがあったら、それは“何者でもない自分”を忘れないで!というサインですよ。

 私たちは「社会的な顔」と「素の顔」の二つを持ち合わせた生きものです。だから片方の「素の顔」に戻れないと、必ず苦しくなっていくんですね。思い当たる人はぜひ、ひとりになれる時間と場所を作ってみてください。スマホは社会とのつながりを暗示するので電源は切っておきましょう。

 そのとき、何をしてもいいし、何もしなくてもいい。社会から自分をいったん切り離して、完全に素に帰ること、心穏やかに過ごすことが目的です。もしかすると、最初は心もとなさやさみしさを感じるかもしれませんが、自分をすべてから解放してあるがままの自分を受け入れる練習と思って、気分のいい時間と空間を演出しましょう。

「無駄なことは排除」「これこれをするべき」と考えてしまう人は、まず「明日のための準備や心配ごとに時間を使わない」と決めて、「誰のためでもない、なんのためにもならない時間を過ごしてOK」と自分に許可してください。

 誰にも気兼ねせず、思いのままに過ごすとき、あなたはきっと「自分が本当に望んでいること」を見つけるでしょう。そして、人生は誰のために、何のためにあるのか・・・そんな大事なことに気がつくかもしれません。

 仮面をつけて舞踏会を楽しむことと、あるがままでいる自由を楽しむことの両方ができて、初めて人生は味わい深いものになるんです。社会に取り込まれて人に流されると、素の自分を見失ってしまうので、意志をもって上手にバランスを取りましょう。



ゆりりんのブログ『ありのまま、なるがまま』

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Last Updated: 2022/06/07