エッセイ

Vol.04

桜花爛漫

桜花爛漫

 沖縄に移住して4年、春になると恋しくなるのはソメイヨシノ。日本を代表するあの桜の色合いと、はかなくハラハラと散るさまは、沖縄桜にはない風情なんです。そこで今年は桜前線に合わせて里帰りし、お花見を満喫しました。

 桜を愛でると必ず思い出すのは良寛禅師の一句。『散る桜 残る桜も 散る桜』・・・とどまるものは何一つないというこの世の無常観を表していると言われます。

 今はどんなに美しく咲いている桜もいつか必ず散ってしまう。人間も同じだ。必ず散りゆくこの命をどう生きるのか?・・・と、真に人生において考え抜くべき問いかけ≠されているように感じるのは私だけでしょうか。

 万物は毎瞬毎瞬、移り変わっています。今日という日は人生に一度しかないし、今日の自分は生涯に二度と存在しない自分なんです。それなのに私たちは、今日という日、今日の自分をぞんざいに生きて、明日も同様に生きられると思い込みがちです。

 いよいよ人生が終わろうとするときに、「こんなはずじゃなかった…」という言葉を口にするのはイヤですよね。どのような形でいつ死が訪れても後悔しない生き方を、今のうちから意図して選びたいものです。

 桜は短くもあるがままに咲き、散ることをいとわず、見る人に感動を与えます。私たちも、人生にとどまるものが何一つないことを前向きにとらえて、今ある命の花を伸びやかに咲かせましょう。

 心構えとしては、「我慢に我慢を重ねる生き方をしない」「失敗しないように生きるのはやめる」「人のためじゃなくて、自分が喜ぶことを優先する」「今しかできないことや、今だからこそできることを選ぶ」など。

 でもそれを実行するときに、「うまくやらなくちゃ…」とか「成功させなければ…」と気負わないでくださいね。一番大事なことは、とどまるものが何一つない人生で、自分がいかに楽しんで移り変わっていくかなのです。

 年老いていくことや何かから撤退するときも、この態度と心構えはとても大事です。人生に訪れるどのような変化も、知恵を絞って笑って迎えられるようになりましょう。

 私はこの頃、「同じ人と会話しても、同じ料理を作っても、まったく同じことはあり得ない。気候や環境や気分が違えば、すべては『一期一会』。本当に何もかも一生に一度限りの出会いなんだなぁ」とつくづく感じます。

 その一度きりの出会いを新鮮な感覚で楽しみたい。今日だけの天気、今日だけの私、今日だけの相手、今日の出来事。すべてに対して余計な判断を持ち込まないで真剣に向き合いたい、と心から思うようになりました。

 若い頃は苦しさと不安に押しつぶされそうになっていたから、いつも心ここに在らずでしたが、ようやく今ここにくつろげるようになって、笑って散る心の準備もできました。たくさんのことを教えてくれたソメイヨシノに、心から感謝です。



ゆりりんのブログ『ありのまま、なるがまま』

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Last Updated: 2022/04/07