マスクを手放せない生活……2年前には誰も想像しなかったはずです。長いコロナ禍で、つらい体験を強いられた人は大勢いると思います。そうでなくても、私たちの人生には、避けようとしても避けられない苦しみがたびたび訪れるものです。
そんな困難に遭遇したとき、他人のことなら客観的に判断できることが、こと自分が当事者になるとどうしても冷静ではいられなくなって、ネガティブな感情に巻き込まれやすくなります。
そこで後悔して、どんなに人を責めても、運命を呪っても、心は救われません。すでに起きてしまったことは、その痛みを100%受けとめて初めて前に進むことができるんです。もし現実から目を背ければ、ずっと同じ苦しみに追いかけられるでしょう。
私は絶望したとき、「人生に偶然はない、無駄な体験は一つもない」とよくよく自分に言い聞かせて、つらい体験から今学べることは何かを必死に考えました。そんなことを何度も繰り返すうち、自らの心を立て直すまでは解決の道は開かれないことを、身をもって知ったのです。
そんな折に、私を助けてくれた一休禅師の遺言≠紹介しましょう。
一休禅師は死に臨んで一通の遺言をしたため、弟子たちにこう告げました。「本当に困り果て、どうにも解決できない難問が出るまでこれを開けるな」と。数年後、寺に大問題が持ち上がりました。弟子たちは不安でたまらなくなって、禅師の遺言を開けることにしました。
すると、書かれていたのはたったの一行、『心配するな。なんとかなる。』
弟子たちはあまりに簡単な言葉に拍子抜けして、大笑いしたそうです。そして、自分たちで問題を作り出していたことに気づいたんですね。そして、明るさと落ち着きを取り戻し、無事に問題を解決することができたというお話です。
私はこれを読んでつくづく思いました。「不安という感情は、心も体も硬直させて判断力も失わせてしまうものなんだな…」って。自分にも思い当たったから。
それからは、不安に駆られて「どうしよう!!」となったときは、「心配するな、何とかなる!!」と思うようにしたんですね。すると、ス〜ッと気持ちが楽になって、本当になんとかなっていくから不思議です。
それが高じて、今では、『大丈夫、なんとかなる!なるようになる!』が私の座右の銘になりました。この言葉が、いつも心の向きを変えてくれます。
この世にあるものはすべて、目に見える物事も、目に見えない感情や意思も、瞬間瞬間移り変わっていきます。それが宇宙の営みだから。その中で私たちは、どう移り変わっていくかを普段は無意識に選んでいるんですね。
つまり、過去のデータに準じているわけですが、これは意識的に選ぶことができるものなのです。自分が選んだものが人生になっていくから、実は、なんとでもなるのです。