エッセイ

Vol.06

ボーッとすることの大切さ

Vol.06 ボーッとすることの大切さ

 超忙しく働いている人って「カッコいい」と思いますか? 私は若いときはそう思っていました。自分もそんなふうに多忙な日々を送って充実した人生にしよう!無駄をはぶいて効率よく生きよう!…と思っていました。

 そのころは「何もしないでただ休むことに価値がある」などと考えたこともなかったから、仕事が一段落するとすぐ次のやるべきことを探して、スケジュール表が先々までぎっしり埋まっていると安心していたんです。

 あなたは子どものころ、「ボーッとしてないで勉強しなさい」「休んでばかりいないで手伝いなさい」と言われたことがありませんか? そんな体験が度重なると、生産的な行動をしない人は堕落している、ボーッとするのは時間の無駄、という観念が刷り込まれて、それに逆らうと罪悪感を覚えるようになるんですね。

 私はその典型でした。罪悪感は不快な感情なのでそれを感じなくてすむように、また忙しそうにしていれば勤勉と認めてもらえるので、もしかしたらそれもあってあわただしく動き回っていたのかもしれません。  現代人は「多忙=勤勉=高評価」という認識で生きているし、今も多くの人がその価値観を持っていると思います。そのようにして社会全体が効率重視の考え方でまわっていると、忙しすぎて心のバランスを崩す人が増えていくのは当然の成り行き。

 私自身、心身が崩壊して入院を余儀なくされて、ようやく”真に大切なもの”に気づきました。心のバランスを崩すのは、自分の時間をゆっくり持てないことが原因ですが、ここがポイント!  自分が自分にボーッとすることを許していないと、何時間休んでも英気を養うことはできないのです。

 ゆっくり休んでも疲れが取れないという人は、体を休めているあいだも頭を忙しく働かせているのでしょう。あせったりイライラするようなことをグルグル考えていると、うまくエネルギーをチャージできず、じっとしていても心は疲弊していきます。

 米国企業が、社員の心を落ち着かせて仕事の効率を上げるために、マインドフルネスという瞑想法を導入して話題になりました。健全な精神を培うために瞑想や坐禅が注目されるのは、思考をとめて頭を真に休ませることの大切さに気づいたからです。

 思考をとめてエネルギーをチャージすると、人間は自然に「やるときはやる!」という気力や体力がわいてくるようになっているんです。結果、頭が冴えていいアイデアが浮かぶようになり、効率がグンと上がります。

「頭を休める=思考をとめる=何も考えない=ボーッとする」ことが心の栄養だから、何はさておき「自分の時間」を作りましょう。でも、意味を取り違えて、趣味に励んだり、ドラマを観たり、忙しくおしゃべりしたりして過ごさないでくださいね。

 ここでいう「自分の時間」とは、本来の自分に帰る時間。俗世間から離れて頭を完全に休ませる時間です。自分自身のために、一日に数分でも「頭を空っぽにして意識を解放する時間」を設けましょう。

ゆりりんのブログ『ありのまま、なるがまま』

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Last Updated: 2018/06/08