エッセイ
  (更新日:毎月7日)

Vol.11
どんなときも今の自分≠ェ最高の自分

Vol.11

 朝晩、めっきり寒くなりましたね。私は寝冷えをして風邪を引いてしまいました。もう治りましたが、風邪といううれしくないもの≠ノ対峙して、興味深い気≠フ流れを体験したのでお伝えします。あなたが不本意なことに対峙したときの体験と照らし合わせて読んでみてください。

 私が風邪を引いたと自覚した朝、最初に思ったことは、「まずい、あさっては雑誌の取材があるのに……」でした。すぐ「今日と明日はゆっくり休んで治そう」と自分がするべきことは決めたものの、グルグルと頭の中を考えがめぐります。

「なんで油断したのかなぁ」「あさってまでに治らなかったらどうしよう」「体調が冴えないと何をしてもつまらない」……あーあ、と大きなため息をついてハッとしました。「後悔と、不安と、今を楽しめない自分が出た!」と気がついたのです。

 気がつけば、「それとは取り合わない」という選択ができます。でも以前は違いました。ネガティブなことを考える自分を責めたり、後悔と不安を消そうとあがいたり……それでますます気を奪われて落ち込んだものです。そんな体験をくり返して、こんなときは取り合わないのが一番、後悔や不安とは別の次元に心を移せばいいということを覚えたのです。

 それは意志の力でできます。そして残されたのは「今を楽しめない自分」でした。今を楽しめない理由を探っていくと、「風邪の自分は、風邪じゃない自分より劣る、嫌だ!」という感情を見つけました。その背景には「ベストコンディションで取材に応じたい。いつも最高の自分を見せたい」という考えがあったのです。

「この考えはもういらないな」と思いました。「好調とか不調とか、今をほかのときと比べる見方はいらない。風邪だろうがなんだろうが、今ここにいる自分以外、私はどこにもいないのだから。この自分から離れるな、私の心!」と心に命じたら……

「咳き込んでも、鼻づまりでも、これが今この世にいる最高の私なんだ」という気持ちが生まれ、鼻づまりの自分を無性に愛おしく感じたんです。早く治さなくてはという焦りも消えて、私は自分に「否定してごめん。このまま笑顔で過ごそうね!」と呼びかけていました。

 2日後に受けた取材は、ありのままの私で、その時間を心から楽しむことができました。一時は、よりよくありたいと思う気持ちがフライングして、「風邪の自分では……」と落胆しましたが、どんな状態の自分でも、その自分をめいっぱい愛することが、今をよりよく生きるには欠かせないことなのです。

 私があなたに伝えたかったことは――、人生でうれしくないものを背負ったときには、(病気、人の評価、失敗、災難など、どんなことでも)その自分を心を開いて受け入れ、「この私を愛さずにどの私を愛するのだ!」という気持ちを強く持ってほしいということです。そうすれば、恐れる気持ちや取り越し苦労が小さくなって、今というときをもっと楽しめるようになりますよ。

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Last Updated: 2016/11/07