エッセイ
  (更新日:毎月7日)

Vol.06
「点」に生きる

Vol.06 「点」に生きる<br>
		</p>
		</td>
	</tr>
	<tr><td colspan=3 height=21 align=center>
		<table border=0 cellpadding=0 cellspacing=0 width=560 align=center>
		<tr bgcolor=

 あなたは幼いときに、「今泣いた烏がもう笑う」とからかわれた記憶はありませか? その昔、子どもは烏みたいに真っ黒に日焼けして、どんなに泣きじゃくっていてもお菓子をもらうとたちまち笑顔になったのでしょう。そんなことからこのことわざは生まれ、人の感情がとかく変わりやすいことをいうときに使われるようになりました。

 確かに、子どもは「今泣いた烏がもう笑う」というワザを容易にやってのけます。私は自分が成人して嫌な感情をいつまでも引きずるようになってから、その価値を痛感して、幼子は無意識にするけれど、私は意図してできるようになりたいと思ったのです。

 なぜなら、「今泣いた烏がもう笑う」ができるのは、泣くことと笑うことが断ち切れているから。悲しみにどっぷり浸かって泣いていても、うれしいことがあれば瞬時に悲しみを捨てられるのは、まさに「今」に生きている証拠だからです。

 幼子の頭には、「昨日のほうがよかった」も「明日はなんとかなるだろう」もありません。あるのは「今」だけ。今に生きていれば、余計な概念や感情に心をもてあそばれないので、迷いや不安が起こらないんですね。

 大人は、過去を反省し、未来に備える力がある一方で、昨日と明日を連鎖して見ることからなかなか離れられません。今を過去や未来と結び付けて、不安になったり憂うつになったりします。その結果、過ぎたことをイジイジ悔やみ、起きてもいないことをクヨクヨ悩むのです。

 頭の中にあるときの連鎖≠断ち切れば、悩みは消えます。今と結び付けて考えなければ、嫌な感情は生まれません。どうしてかというと、昨日や明日なんてもともとないから……そういうと信じられないかもしれませんが、ときの流れは観念の世界にあるだけで、実際に私たちの目の前にあるのは、いつも「今」なのです。

 そう考えると、「あのときああしておけばよかった」「いつかそうすればいい」という発想は意味がないと思いませんか? 「今あるもので楽しむ」「今できることをはじめる」という発想が重要で、それが人生を築く力になるのです。

 今悲しかったら今泣いて、今うれしいことがあったら今笑う。あれこれ考えて、感情を捻じ曲げたり押し殺したりしないようにしましょう。もっと無邪気に、もっと素直に今の気持ちにしたがえば、もっと輝いて、もっと楽しく生きられますよ。

 時間は過去から未来に続いているように見えるかもしれませんが、あなたが生きているのは、時間の線上ではなく、点上です。あなたは今、今、今……という点上で、まばたきをするような一瞬に、意思を放って人生を築いています。「今はこの私しかいない、だからこの私でいい」と思えれば、この私で満足な人生が、その瞬間からはじまるのです。

「今しかないけど、今がある」という言葉の重みをよくかみしめてみてください。そして、全力で泣いて笑って今に生き、今の自分を愛しましょう。

エッセイバックナンバー


| ホーム | プロフィール | エッセイ | ねっとカウンセリング | ファンレター |
| Booksコーナー | 講演依頼 | お知らせコーナー | ボイス・レター |

Last Updated: 2016/06/07