人を許せなくて胸が痛い……という人はいませんか? 人を許せない気持ちはどうしてわき起こるのでしょうか。それは、そもそも自分がその人に何かを期待≠オたことからはじまっているのです。
人に何かを「こうであってほしい」と期待したとき、それを願い≠ニ言うと聞こえはいいのですが、実態は欲望≠ネのです。だから、裏切られると欲求を満たせなかったことに失望し、自分を失望させた相手に頭にくるんですね。
人に期待することは、悪いことでも、いけないことでもないのですが、「期待=欲望」と気づいていないと、逆恨みして自分の傷口を広げてしまう恐れがあります。たとえば、「自分は仲間たちから大事にされる」ことを期待したとしましょう。すると、ちょっとした陰口や仲間はずれにとても傷つきませんか? それを「私へのひどい仕打ち」と思えば、「許せない!」という感情も込み上げるでしょう。
人を許せないときの心中は穏やかではありません。プリプリ怒りながら、本当は泣きたいくらいみじめな気持ち。それでつい「思い知らせてやりたい」などと思ってしまう……。でも、そんなことを考えはじめると、心はどんどん負のスパイラル≠ノ巻き込まれていきます。
それはもっと苦しいことなんですね。あなたは、「頭にきた相手をすんなり許すことができたらどんなにラクだろう……」と思ったことはありませんか?
頭にきた相手を許せない苦しみの底にあるものは、傷ついた自分を許せない苦しみなのです。だから「許せない!」と思ったときは、懸命に心の舵を取って方向転換して傷ついた自分自身を許すこと。それが苦しみから解放される術なのです。
気持ちを落ち着けて、「私は心が傷ついている」と素直に認めることが最初の一歩。それから「よく耐えた、もう苦しまなくていいよ。もう終わったことだから前を向こう」と自分自身に呼びかけましょう。
心理学では、『自分を傷つけることができるのは自分だけである』という見方をします。というのは……たとえ人から気にさわることを言われても、もし、自分がサラリと受け流すことができたら心は傷つかないからなんですね。ところが、たいていの人は、言われたことを真に受けて怒りや恨みを抱いてしまうのです。
もし、怒りや恨みがこみあげたら、許せない気持ちの底にある感情を探ってみてください。必ず自分の期待≠ェ潜んでいるはず。相手に何を期待して(どんな欲望を掲げて)自分の心が傷ついたのかがわかれば、それを置いて心を整えることができるでしょう。
「そう言われても、どうしてもまわりの人に期待してしまう……」という人は、期待した通りにならなかったときは、「いい勉強になった」で締めくくりましょう。間違っても「許せない!」と逆恨みしないことですよ。