エッセイ
  (更新日:毎月7日)

Vol.04
「やさしさを解き放って」

Vol.04 「やさしさを解き放って」

 春から新生活がはじまった人もいることでしょう。新しい環境でどんな人間関係が生まれるのか、興味津々ですか? それとも戦々恐々ですか? いずれにしても人と触れ合うときは、身構えないほうがいい。身構えないとは、考えすぎないということです。

 たとえば、隣の席の人が見るからに元気がなさそうなので、あなたは何か声をかけたいと思ったとします。そのふっとわいた気持ち≠呑み込んで「何を言うべきか」と考えはじめると、体が固まってしまいます。「こう言ったら相手はどう思うだろう」「自分はどんな人間に見られるだろう」ということが気になり出すんですね。

 もしそこで、「どうしたのって聞かれたらうっとうしいかも……なんでも話してって言ったらおせっかいと思われるかも……いっそ知らんぷりするほうが親切かも……」と考えが止まらなくなって声をかけそこね、冷たい人だと思われたらイヤでしょう?

 では、どうすればいいのかというと、ふっとわいた気持ちをそのまま言うようにしませんか。まとまってなくても最初の感情を口にする。口にしたことで次の感情がわいたら、それも追加する。これが、素朴なやさしさが一番伝わると思います。

 先の例でいうと、最初にふっと思った「元気がないみたいだけど、大丈夫?」をそのまま言葉にします。で、力ない笑顔が返ってきたら、それを見てわいた気持ち「私でよかったらいつでも話してね」を追加します。相手はこれだけで「今は話しても話さなくてもいい。でも心配してる。いつでも聴くよ」という3つの想いを感じ取るでしょう。

 あなたのなかにあるやさしさは、あなたが何をしても、何もしなくても、減ることも増えることもありません。ずっとあなたのなかにあります。そのやさしさを解き放つことをためらうと、結局、ありのままの自分を封じ込めることになるのです。

 まわりとギスギスしてつらいと感じたときは、自然にあふれ出すやさしさを流せなくて、自分が不自然≠ノなっているとき。つまり、自分からやさしさを抑えつけて息苦しさを味わっている状態なのです。

 それがわかれば、息苦しい状態から抜け出すためにできることが見えてくるはずです。ふっとわいたやさしさを、身構えず、あっけらかんと相手に差し出しましょう。差し出したらそこで終わり≠ナすよ。自分がどう思われるか心配したり、見返りを期待しないことです。

 差し出したくても言葉がうまく出てこないという人は、心のなかを中継するように伝えてみてください。「あなたの力になりたいんだけど、どう言えばいいかわからなくて……」とか「あなたともっと親しくなりたいの」というように。

 あふれる想いを語るときは、決して自分を飾らないこと。そうすれば、言葉も飾らないから、ストレートに素朴なやさしさが伝わると思います。心を全開にして、新しい人たちとの触れ合いを大いに楽しみましょう。

エッセイバックナンバー


| ホーム | プロフィール | エッセイ | ねっとカウンセリング | みんなの広場 |
| Booksコーナー | 講演依頼 | お知らせコーナー | ボイス・レター |

Last Updated: 2015/04/07