エッセイ
  (更新日:毎月7日)

Vol.09
「何パーセント、今に生きていますか?」

Vol.09 「何パーセント、今に生きていますか?」

 人生にはアップダウンがあります。なんとなくスランプ気味なときも、何をやっても気が晴れないときもあるでしょう。そんなとき、私は好んで高台に足を運びます。そこで「視点を変える」と、すんなり気分転換できることがあるからです。

 高台といっても、家々がマッチ箱みたいに小さく見えるくらいの高所がちょうどいい。都会暮らしのころはタワーの展望台に足を運びましたが、田舎暮らしの今は山の見晴台に向います。そこから人間の住みか≠見下ろすのです。

 小さな家々のさらに小さな窓から、人間の暮らしをのぞきこむようにじっくり眺めます。「数え切れない窓の内側では、この瞬間も笑い合ったり、泣いたり、怒鳴ったり、落ち込んだりして、無数のドラマがくり広げられてるんだろうな」と思うと、窓の数がそっくり人間ドラマを映し出す鏡のように見えてきます。

 すると不思議なことに、「自分も、あの小さな窓の内側でチマチマしたことに心をわずらわされてたんだ。ちっちゃいなぁ……やめやめ、もっとデッカク生きよう!」という気になるんですね。 

 スランプに陥ったとき、焦りや不安に取り込まれそうになったときには、自分を追い詰めないことが大事です。そんなときは、ぜひ自分を突き放して客観的に眺めてみましょう。まったく違うアイデアがひらめくかもしれません。

 私は山頂で「なんでもかんでも解決してスッキリしようとしなくていいんだ」と気づくことができました。「今はどうすることもできなくて悶々としているなら、その今に心を100パーセント置いておく。物事は、今という時間とともに刻々と移り変わるから心配しなくていい」と感じて心が救われました。

 もし、あなたの心が今に70パーセントしかないときは、残りの30パーセントは自動的に過去に置き去りにされているんですね。つまり、今を生きていない部分は過去にとらわれ、そこから未来を見て焦りや不安を感じているのです。

 過去にとらわれると、目の前にあるものが全面的には目に入らないし、まわりの声もきちんと聞こえなくなります。結果、今を楽しむことも、今行動を変えて好きな未来を創造することもできなくなってしまうのです。

 心を今に100パーセント戻すには、「余計なことを考えるヒマをなくす=ひとつのことに没頭する」のが一番。たとえば、好きな仕事や趣味に打ち込む、スポーツに興じるなど。でも、それで不快な疲れを背負い込んでは意味がないので、あと味が爽快で、心が洗われるようなことを積極的にやりましょう。

 ほかの人のために掛け値なし≠ナ動くことは、とてもいい考えです。持てる情熱のすべてを注ぎ込んで人を助けたり、生きものの世話をしたりする……。すると、価値あるもの(それは感動かもしれないし、将来の夢かもしれない)≠きっと発見できますよ。

「我を忘れて何かに身を投じる」楽しさは、まさに「今を生きる」楽しさです。それこそが、スランプを脱し、焦りや不安を回避する術なのです。

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Last Updated: 2014/09/07