エッセイ
  (更新日:毎月7日)

Vol.04
喜んでできるとき

Vol.04 喜んでできるとき

 困っていたからつい引き受けた、力を貸してほしいと頼まれて断り切れなかった、と心やさしい人ほど他の人から強引に押し切られてしまうことがあるのではないでしょうか。人助けはいいことです。それで人に喜ばれるなら悪いはずがありません。あとから自分が後悔さえしなければ……。

 でも往々にして、人助けのつもりで引き受けたものの、それでやろうと思っていたことができなくなったり、責任を背負い込んで気が重くなったりして、どうして承知してしまったのかと悔やむことがあるかもしれません。

 他の人からどんなに重宝がられても、そのたびに自分がジレンマを抱えて小さな後悔を積み重ねていくと、"お人よし"があだになって、NOと言えない自分をジワジワと嫌いになってしまうことがあります。私がそうでした。

 やさしいつもりでしたことがどうしてそうなってしまうのでしょう? それは、やさしさを最初に向ける相手は自分だということを忘れているからです。自分をないがしろにすると、結局は、他の人にも自分の本当のやさしさを渡せなくなってしまうんですね。

 普段から自分に「どんなことをしたい?」「だれと一緒にしたい?」と尋ねて気持ちをちゃんと把握していたら、「意に沿わないことは自分にさせないからね」というやさしさがわいてくるはず。自分を大切にするとは、そういう強さを持つことだと改めて感じます。

 だから、頼まれ事を断るのに"体裁のいい嘘"をつく必要はないと思います。もっともらしい理由を考えても、嘘は嘘。それで相手はだませても自分はだませません。嘘をついてまで悪く思われないようにしようとする自分に、私は辟易としたことがあります。

 そんな体験をした私からあなたに送るメッセージ。それは、だれに対しても嘘のない自分を見せてこそ、自分に忠実な生き方ができて自分を好きになれますよ。もし、正直に伝えたら気分を害して冷たくなったという人がいたら、「これで付き合う相手を選別できた」と思えばいい。だれとでも仲良くするなんて、そもそも不可能な話なのだから。

 強引な人に引きずられて生きるのではなく、あなたの正直さを買ってくれる人と助け合って生きていってください。もしも、大事にしたい人に頼まれて引き受けたのはいいけれど、想像以上にたいへんでストレスがいっぱい、なんてことが起きたときは……。

 エゴが心に押し入って、あなたのやさしさを蹴散らそうとしています。だれかの力になることは、ラクなことばかりではないから価値があるんですね。いっときのエゴに負けて大事な人を裏切ることは、自分の気持ちを裏切るのと同じことだと思います。

 さあ、その人の喜ぶ顔を思い浮かべて。心に生じた不満を育てないで、相手を幸せにすることを自分の喜びとして感じましょう。すると、あなたのやさしさを"愛"にまで高めることができます。ただの"お人よし"から"愛の人"に成長できるのです。

 愛の人がすることは「喜んで」しかありません。「いやいや」や「義理」はありません。喜んで何かできるとき、その行為は、相手以前にあなた自身を幸せにするでしょう。

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Last Updated: 2013/05/07