エッセイ
  (更新日:毎月7日)

Vol.08
せみしぐれ

Vol.08 せみしぐれ

 漢字で『蝉時雨』と書きます。多くの蝉が鳴きしきる声がまるで雨音のように聞こえるさま。ひとつの夏の風物詩ですよね。朝日が昇ると同時に賑やかにはじまる蝉時雨、その声で毎朝目が覚めるという人もいるでしょう。

 先日、蝉時雨に起こされた私は、しばらくその鳴き声に聴き入っていました。すると、個性豊かないろんな声色が耳に届いてそれはそれでおもしろく、さらに、どの蝉も本当に必死に鳴いている気配に「まさしく命がけ……」と感心してしまいました。

 一般に、成虫になった蝉はわずか1週間くらいしか生きられないと言います。その間に一世一代の求愛をするわけです。そう思うとエールを送りたい気持ちになりました。一生の長さは違うけれど、限りある命を生きる私たちもあんなふうに完全燃焼したいものです。

 あなたは、人間の命の価値はどこにあると思いますか? 私は、ひとりひとりの命の使い方で決まる気がします。私たち人間には自由意思があり、どのくらい幸せかを個人個人が自覚できます。だからこそ、「どんな自分になりたいか」「この一生で何をやり遂げたいか」をしっかり踏まえて進むことが、自分の人生を幸せに生きる道だと思うのです。

 ちょっと想像してみましょう。もしもあなたの寿命はあと1週間と言われたら、どんなことをどんな気持ちでするでしょうか……? これまでと急にすることを変えますか? それとも、同じことを気持ちを入れ替えてしますか? 

 これは「わずか1週間の命と同じくらい今を真剣に生きているか?」という自分自身への問いかけなのです。実際に、あなたの人生がいつどんな形で終わるかはだれにもわかりません。ずっと今のままでいられると思わないで、もう少しときを惜しんで、与えられた命を有効に使いましょう。

 何も特別なことをしようと言っているのではありません。いつもと同じ日常を、ちょっと意識を変えて過ごしてみませんか、という提案です。たとえば、毎日顔を合わせる人々とこれが最後になるかもしれないと思って接したら、どんな変化が生まれるでしょうか? 人生に残された時間があと1週間しかないとしたら、どんな覚悟が生まれるでしょうか?

 そんなことをつらつら考えるうちに、「目に見える物にいくら執着したって仕方がない。いいかげんに生きるのはむなしい。人生が終わるときにほしいものは"心の底からの満足"なんだ」と気づくかもしれません。それはとても意味のあることだと思います。

 かつて、私は蝉時雨をうるさく感じていました。これも心の写しだったんですね。そのころは自分のことで頭がいっぱいで、たえず緊張していてイライラしていました。そんな心をほぐして敵対意識を解いていったら、ついに蝉も味方して"気づき"を与えてくれる存在になりました。

 今あなたが「いやだ」とか「迷惑だ」と感じているものへの意識から変えてみませんか。心の中で敵対しているものへのこだわりを捨てて"和合"に切り替えるんです。すると、人生からいやなものがひとつ減って、きっと、素敵な気づきがひとつ増えますよ。

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Last Updated: 2012/08/07