『心に自分の3畳間を持つ』――フランスの思想家、モンテーニュのこの言葉を見て、いい言葉だなと思いました。
私たちの頭の中には、他人から言われた言葉や、テレビやインターネットで触れた言葉など、ふだんは雑多な情報がゴチャゴチャに入り乱れています。そこには思い出すと楽しい気分になれる言葉もあれば、「うざったい、早く忘れたい」と思う言葉もあるでしょう。
特に、心を傷つけられたイヤな言葉は、二度と思い出したくないのになかなか耳から離れないものです。その言葉がイヤな連想を駆り立てます。実は、私たちはそうやって自分で自分の傷口を広げているかもしれないのです。
たとえば、あなたが面と向かってだれかに非難されたとします。その言葉を耳にしたのは1回だけなのに、あなたは何十回も頭の中でくり返してすっかりイヤな気分になります。そして、何十回も言われたかのごとく深く傷ついてしまいます。
そこに輪をかけるのがイヤな連想。たとえば「他の人もそんな目で見ているに違いない」「私は知らないうちに笑いものにされている」とネガティブな想像をふくらませて、いっそうストレスを増大させてしまうことがあるんですね。
でも、もしもそのとき、自分がしている反復作業(イヤな言葉をリピートしていること)にハタと気づいたなら、「バカな想像はやめよう」と思いとどまれるのではないでしょうか。そうすれば、余計なストレスを浴びなくてすむと思います。
「心に自分の3畳間を持つ」ことは、そのためにとても有効なのです。3畳間とは、そこに座って黙って自分と向き合うスペース。それを心に持つことは、だれにも邪魔されず、自分を振り返る時間を持つということ。
あなたも心に3畳間を設けて"熟思黙想"するようにしませんか。熟思黙想は、黙って心を平静にしてじっくり考えることです。情報にあおられてせわしく生きている人ほど、だれにも邪魔されず、自分を振り返る時間を持つことには大きな価値があるでしょう。
3畳間で情報を整理するもよし、自分の言動を反省するもよし、ひらめきをキャッチするもよし。だからこそ、3畳間では意地やごまかしをシャットアウトして「素直に」なってくださいね。損得勘定や怒りを入り込ませないで「慈悲深く」なってくださいね。
一日の終わりに、あなたの幸せの足を引っ張るような重たい感情を振り払って、素直で慈悲深い"本来の自分"に帰りましょう。毎晩、そうやってチラッと本来の自分に帰ってから眠るか、それとも帰らずにそのまま眠るか……。時間にすればわずか数分のことが、あなたの未来を二分することになるのです。
間違いなく、それはあなたが自分を真に大切にする一歩になるから、さっそく心に3畳間を作って、そこでひらめいたことや、改めて気づいたことにしたがって行動を開始しましょう。きっと、人生が幸せな方向に展開しはじめますよ。