エッセイ
  (更新日:毎月7日)

Vol.09
「ホンモノを目指そう!」

Vol.09 「ホンモノを目指そう!」

 実力派、演技派として高い評価を得ている俳優が、自分の若いころを振り返ってこんなことを語っていました。「35歳までは『オレはうまい』という自意識があったからまったくダメでした。そんな役者の演技を見て人が感動するかと言えば、しないんですね。そのことに気づいて、徹底的に自意識をそぎ落とすことからはじめました」。

 それから真のやさしさに目覚め、感謝の気持ちが生まれたんだそうです。「カメラの前でやらないことが、カメラの前で反映されるんです」という言葉が胸にジンと響きました。これは「普段やっていることが、レンズを通して表れる」、つまり「いい役者になるには、日常の暮らしぶりがものを言う」という意味。それ以来、おごらず、ぶらず、普通の感覚を大切にして毎日を暮らすよう心がけていると書いてありました。

 私はとても共感しました。『演技』を『文章』に、『レンズ』を『著書』に置き換えると、まさに自分の体験だったから。私にも「どんなにやさしい言葉を並べても、書き手に真の愛がなければ、それを読んだ人が癒されることはない」という実感があります。そこにたどり着いて、愛ある人間として生きようと今も精進しています。

 もしかすると、これはだれにでも当てはまることかもしれません。もし、あなたがまわりから「こう見られたい」とか「こう感じてほしい」と望むことがあれば、本当にそういう自分になる。ようは"ホンモノ"になる努力をしない限り、それは叶わないのです。

 メッキはいずれ剥げるし、ニセモノはいつか正体がバレる。それをごまかそうとすれば、たいへんなストレスを背負って生きることになってしまいます。それくらいなら、「こう見られたい」自分、「こう感じてほしい」自分になる努力を地道に重ねようと決意するほうが心はずっと喜びますよ。

 あなたは何に対して、ホンモノの自分になりたいのですか?……愛を貫くこと? 夢をあきらめないこと? ウラオモテのないこと? 約束を守ること? 自分を偽らないこと? 友だちを見捨てないこと? ……考えてみましょう。

 そして「これだけはできる自分になりたい」と思うものを選んで、ホンモノになる努力をはじめましょう。すると、人生に迷うということがなくなっていくから。私たちが迷うのは、損得や体裁やメンツにこだわる自分が顔を出すためで、それはホンモノになりきれない自分のあえぎのようなものなのです。

 ただし、ホンモノを目指そうとすれば、悪戦苦闘するのは当たり前。心がブレそうになったら初心に返り、「ブレない、ブレない、もう大丈夫!」と自分を励ましながら気持ちを立て直して前に進みましょう。

 この姿勢が、自分は何者として生きていくかを決定するのです。大切なのは日常生活、普段の態度や言葉です。そこにブレが見られなくなったとき、あなたは限りなくホンモノに近づき、それらのすべてが仕事内容や人間関係にそっくり反映されていくでしょう。

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Last Updated: 2009/09/07