もしも、あなたが友人に「あの子のことだけど、私を嫌ってるような気がする」と打ち明けたとき、「あなたがあの子を嫌ってるから、あの子から嫌われてるように感じるんじゃないの?」といわれたらどんな気がしますか?ちょっと想像してみてください。
たぶんムッとして「そんなことはない!」と反発するのではないでしょうか…。実をいうと、大多数の人がそんな反応をするんですね。かくいう私も、心理を学ぶまではそのひとりだったと思います。
さて、この友人の発言ですが、ほぼズボシなんですよ。これを"投影(自分の気持ちを相手の気持ちの中に映し出す行為)"といいます。私たちは無意識のうちに、この投影をよく行います。
なぜかというと、自分が誰かを嫌っている気持ちは心地よくないからなのです。そこで心地よくない部分を相手に投影して、つまり自分から切り離して心地悪さから逃れようとするわけです。
たとえば、あなたが「あの人は本当のことをいわないからいや」と感じた場合、真実は「いつも本当のことをいわない自分がいや」だったりするんです。それを認めたくない、その自分を責めたくないという防衛本能が、瞬時に投影を引き起こします。
投影した相手を責めれば、あなたは自分を責めなくてすむからですが、そのままで人間関係がうまくいくはずはありません。だれだって真実でないことをいわれたら不愉快だし、そういうあなたを信頼できないと思うからです。
投影の問題は、あなたが自分の真実を見過ごすことにあります。そこで「投影は万人の癖である」ととらえてみませんか?投影そのものに目くじらを立てるのではなく、「投影癖を自覚すれば、自他をより深く知ることができる」と考えるんです。
そして「私は知らないうちに自分を相手に投影するかもしれない」ということを念頭に置き、そうと気づいたらその場で改めていきましょう。本当の気持ちを隠したり意固地になったりしないことは、信頼関係を築く上で不可欠だから。
また「人も私に気持ちを投影するかもしれない」ということに配慮して、ゆとりを持って相手の言葉を受け止めるようにしましょう。そうすれば、相手が自分に対してとんでもないことを思っていたとしても冷静に対処できると思います。
心の癖と聞くと、投影をはじめ、さらにトラウマなどが入り混じった複雑なようすを連想するかもしれませんが、"本来の私たち"はいたってシンプルなんですよ。
本来の私たちは、人を愛することが好きで、人も自分も愛したい生きもの。ただそれがうまくできないと、素直な表現ができなくなって心の癖が表面に現れてくるだけなのです。
つまり、好きで人を責めたり嫌ったりする人間もいなければ、人を責めたり嫌ったりして気分のいい人間もいないということ。そのことをよく理解して、どんなときもできる限り素直な心で愛を流せるように"本来の私"を見失わないようにしてくださいね。