(更新日:毎月7日)

Vol.01
「2008年のはじめに」

Vol.01 2008年のはじめに

 今年は元旦に、長野県の北部にある戸隠神社に初詣に出かけました。奥社は入り口から雪深い山の中の道を30分ほど歩いたところにあります。

 入り口から奥社まで杉並木にはさまれるようにして参道があり、人々が雪を踏み固めて歩いた跡が太いみぞのようになって続いています。雪の深さは入り口で30cmくらい、本殿付近は1mくらいあると聞いて、私は持参したスノーシューを履いて登りはじめました。

 スノーシューは雪用の歩行具のことで、いわば西洋かんじき。フレームはアルミ製で、裏側には爪で滑り止めが施してあります。これを履いて両手にストックを持てば、どんな雪深いところでも楽に歩けます。

 20分ほど坂道を登ると、さすがに汗ばんで息が切れてきました。70cmくらいある雪のクッションの上に背中からドーンと倒れ込むと、とたんに、高くそびえた杉並木の天辺が見えました。

 顔におおいかぶさるような枝の隙間から雪がかすかに舞い落ちて、ひとひらふたひらと顔に降りかかります。そんな風景を下から仰ぎ見ていると、まるで大自然が作った万華鏡をのぞいているような気持ちになります。

 何もかもが美しく、私は幸せでした。今朝ここですれ違ったほとんどの人たちから「あけましておめでとうございます」と声をかけられたことも…。同じ思いを胸にはるばる奥社をめざす同胞を励ますような新年の挨拶が、ことのほかうれしかったのです。

 お参りを終えた帰り道、今度は自分が登ってくる人たちに声をかけ、知らないうちに励ましていることに気がつきました。「そうか、自然に相手の気持ちになるからだ。登りの苦しさがわかるからなんだ」。

 雪の白さが身を清めてくれるのか、参拝して心の垢が落ちるのか、それとも新年への希望が気持ちを明るくするのか、だれもがすがすがしさに満ちたいい顔をして温かい気を放っています。

「普段は、どうしてこんなふうに人同士が触れ合えないのかな…」もしも、個人主義がいい、他人にはかかわらないほうがいいという態度でいたら、私たちは心を通わすチャンスをなくしてどんどん凝り固まっていくのではないでしょうか。

「だれに対しても、自分と違う点より、まず共通点を探して、自分からやさしい触れ合いをしていこう」これが2008年の幕開けに雪に抱かれて思ったことです。

 奥社まで雪靴で歩く人、クロスカントリーで行く人、革靴でがんばる人、スノーシューの人、方法はみんな違っていたけれど、みんな楽しそうにひとつの場所に向かっていました。これって私たちの人生と似ていませんか? 

 それぞれが好きな方法を選んで道中を楽しく過ごす。これが人生を楽しむヒケツだと思います。その途中であなたが試行錯誤をくり返したとしても、それを苦労だとは思わないでください。どんなことも苦労にしないで"常に工夫する気持ち"が大事ですよ。

 あなたにとって2008年が、工夫の成果が表れるすばらしい年になるよう願っています。

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Last Updated: 2008/01/07