(更新日:毎月7日)

Vol.5
「宇宙の神秘」

Vol.5 宇宙の神秘

 ちょうど去年の今頃、一組のツバメが飛んできてうちの軒先に巣をかけました。ツバメたちは、卵やヒナをねらうカラスなどの天敵が近寄らないように、あえて人家を選んで巣をかけるのだそうです。

 私は初めて遭遇した出来事にワクワクしながら、卵が産まれてヒナが巣立っていくまでのドラマを見守りました。このときの模様は、最新刊『こころの贅沢、見つけよう』(5/10幻冬舎発刊)に詳しく書きましたので読んでみてください。

 実は、そのツバメ夫婦が、なんと一年ぶりに帰ってきたのです。私はすっかり感心して「いったいどうやってうちを探し出したの?」と思わずツバメに尋ねたくらい!

 越冬するために遠く離れた南の島(台湾、フィリピン、ボルネオ島など)に渡っていたツバメたちは、春の訪れとともにふたたび日本に渡来し、これほど家が密集している中からたった一軒の〈自分たちの巣がある家〉にドンピシャリ帰ってくるんですね。

 この現象を「渡り鳥の習性」と言って片付けてしまうことは簡単ですが、私はそこに何ともいえない宇宙の神秘を感じました。渡り鳥たちは、方角や道筋を太陽や星の配置、磁気や地形から決めるといわれています。その能力こそ神秘的だと思いませんか?

 こんな話もあります。――秋に騒音のない静かな場所で耳を澄ましていると、チッチという鋭い声や、シュッシュッといったさまざまな音が聴こえてくる。それは、渡り鳥たちが広い空を飛ぶうちに仲間がはぐれないように呼び交わすサインなのだ、と。

 人間の知識では説明できないことが宇宙には数限りなくあるけれど、今回私は、渡り鳥の不思議を目の当たりにして感動し、興奮を覚えました。

 振り返ってみれば、子どものころは何を見ても不思議がって、その分もっとおもしろおかしく過ごしていたように思います。でも大きくなって、物事を頭で理解するようになってからは、何をするにも知識優先になり過ぎているのでは…という気がするのです。

 大人は、他人が集めた情報を知識と呼んで、例えば「渡り鳥の習性」「遺伝子の働き」「宇宙の仕組み」といった言葉でくくって理解した気になります。しかし実際は、知識を得ること″と宇宙の神秘やいのちの不思議を感じること″は別です。

 このことは「幸福」についてもいえます。もしも、人間が知識の力で幸福になれるなら、日本から不幸な人はいなくなっているはず。そう思いませんか?

 私たちの幸福のもとは、理屈抜きで幸福や神秘を感じられる心にあるのかもしれません。それは「知識」や「理屈」以前に、大自然やいのちに対する「たまらないいとおしさ」や「畏敬の念」を感じる感性のこと。

 その感性がさびついてくると、世の中が退屈に見えて、自分をつまらない存在だとか不幸だと思うようになるんですね。もし、ちょっとでも思い当たったら、自分が童心に返ることをもっと奨励しましょう。素朴に宇宙の神秘を楽しんで、その中で自分も生かされていることを改めて感じてみましょう。

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Last Updated: 2007/05/07