子どものころから「仲良くする」という言葉を私たちはよく耳にします。たとえば、「兄弟姉妹は仲良くしなさい」「いつまでも仲の良い友だちでいようね」「家族は仲良く暮らすに限るよ」というように。
もしあなたが、家庭でも職場でも一緒にいる人たちと本当に仲良く過ごせたら、人間関係で疲れることはなくなるでしょう。孤独感からも解放されるはずです。
だけど現実は、仲良く過ごしたくても思うようにいかなくてちっとも安らげないとしたら、一度自分の心をのぞいてみませんか?
単にケンカをしないようにすることが、仲良くすることはではありません。仲良くする心が自分に備わっているかどうかが問題なのです。それがわかる例をあげましょう。
ここに10代のあなたがいます。今から友だちと二人で留守番をすることになりました。ママが「ショートケーキが一つあるから仲良く食べなさい」と言い残して出かけると、あなたはケーキを二つに切って友だちと食べました。
そこで質問です。「どうしてケーキを分けて食べたの?」と聞かれたら、あなたは何と答えるでしょうか。考えてみてください。
実際に子どもたちに聞くと、さまざまな答えが返ってきます。「言うことをきかないとママに叱られるから」「今度は私が分けてもらえるから」「だって、友だちに嫌われたくないもん」「友だちがかわいそうだから」…この中にあなたの答えがありますか?
ひとりだけ、こう答えた子どもがいました。「なんでも一緒に分けて食べると楽しいから!」実は、これが"仲良くする"ことの基本なのです。
独り占めするよりもずっと楽しいと知っているから、自然に喜びを分かち合いたいという気になるんですね。これはだれかに命令されたからとか、計算や同情から生まれるものではありません。
その逆は、常に心を緊張させて自分だけいい思いをしようとする人です。少しでもままならないとすぐイライラして、分かち合いを楽しむゆとりなどありません。
「分かち合えば楽しい」というのは、"共感する"感性があるということです。「相手も同じことを感じてる!」とわかれば、きっと会話も弾んで孤独感も消えるでしょう。
つまり、仲の良い家族とは「分かち合えば楽しい」ということを知っている家族なのです。仲良く暮らすコツは、共感の感性を育むことに尽きるので、親が子にその喜びを教えるのが何よりだと思います。
すでに成人したあなたは、自分が努力して共感の感性を高めましょう。だれかと過ごすときは、「そこにある相手の喜びを一緒に感じる」ことに意識を向けて。小さなつながりを実感するたびに、あなたの感性は磨かれていくから。
すると、うれしいことに限らず、相手の悲しみや心の痛みも自然にくみとってあげられるようになりますよ。悲しんでいる相手は、あなたがそばにいるだけで癒されると感じるでしょう。そうやって仲良く暮らしたいですね。