(更新日:毎月7日)

Vol.6
とんでもない体験

Vol.6 とんでもない体験

 旅から戻ると、とんでもない体験ほどおもしろい話になるものですが、「そんなバカな…」という体験は、新しい気づきにあふれているのかもしれません。今回は、そんな私のエピソードです。

 5月にイタリアを巡ってきました。旅の最後に、フランスに住む友人を訪ねようとミラノから列車でニースに向かい、降り立ったプラットホームでの出来事。

 GパンにTシャツ姿の3人組(男2、女1)が近づいてきて、身分証明書を見せ「カスタマーだ。荷物を見せなさい」と英語でいいました。

 フランス語の証明書がはたしてホンモノかどうかわからないし、3人はユニホームも着てないし、そこは誰でも入れるプラットホームの片隅。私は戸惑いながらも、仕方なくバッグを開けました。

「イタリアから来たのでチェックする」といって、若いカスタマーと称する男性が洗面道具の袋をホームに投げ捨てたのでムッとしました。「私は日本人ツーリストで、ニースの友人を訪ねてきた」といったけれど無視され、靴の入った袋も投げ捨てられました。

 続いて小箱を取り出して開けると、デミタスカップを見た途端、私の鼻先にカップを突きつけ「ツーリストじゃない、仕事できたんだろう」と声を荒げたのです。

 私はワケがわからず、「違う、これは自分の土産だ」と説明したものの、イタリアを旅してきて警戒心が強くなっていたこともあって、『言いがかりをつけて、事件に巻き込む気かもしれない』と怖くなりました。

 そこで、バッグをかきまわす男性の手を制して、「あなたは本当にカスタマーですか?」と聞いたのです。

 それが気にさわったようで、彼は「カスタマーだ!」とどなっていきなり私の腕をつかむと、なんと、手錠を取り出してはめようとしました。

 私は「NO〜!」と叫んで必死にはばみながら、手首に押しつけられた手錠の感触に『ホンモノなの?!』それより『これは夢?それとも現実?』と意識が遠のきそうになりました。

 そのときです。こっちに向かって歩いてくる友人の姿が目に入ったのは…。心配して探しにきてくれた友人は、私が3人を疑った理由と日本人が巻き込まれた事件のことを、フランス語で通訳してくれました。

 すると女性カスタマーは、「あなたが疑うのは正しい。フランスでも駅を出たら気をつけなさい」と一言。手錠はもちろんホンモノで、彼らは"偽ブランド品ビジネス"の取り調べをしていたようです。フランスでは、カスタマーの権利は絶対だから抵抗してはいけないとのこと。

 間一髪で逮捕劇を逃れたとはいっても、私は大ショック!もし私が最初から疑惑を持たなければ、あんなことにはならなかったかもしれないけど、「人生、いつどんなことで一変するかわからない」と痛感。あぁ、びっくりしたぁ〜!

 無事、普段の生活に戻って、当たり前のことが変わらずにある幸福″をかみしめました。「旅の刺激」はかけがえのないもの。でも「平凡でつつがない日常」は、もっとかけがえのないありがたーいものですネ。

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Last Updated: 2005/6/07

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