無償の財産   

Vol.5

『無償で与えられているものにこそ、計り知れない価値がある』としみじみ感じます。無償といったのは、そのためにお金を払わなくても労働しなくてもいいもの。万人に平等に与えられているものです。

 筆頭にあげられるのが、大自然でしょう。末端には、自然の一部である私たちの肉体もあります。美しい景色、大地や太陽の恵み、それを受けとめられる五感があること…それらすべてが、ほんとうにありがたい。

 大自然に敬意を表して暮らすことは、心豊かに生きていくことに他ならないと思います。でも私たちは、うっかりすると無償で与えられているものに対して『あるのが当たり前』という感覚に陥りがちですよね。

 すると感謝の心を忘れて、そこにある幸福を見失うことになってしまいます。お金では買えないものにこそ、幸福の源があるということを思い出しましょう。

 心の豊かさがあって初めて、ものの豊かさが真の喜びになるのです。ものだけに幸福のよりどころを求め出すと際限がありません。なぜなら、それは欲望と表裏一体だから。手に入れたとき嬉しくても、すぐに物足りなくなったり不安になったりします。 

 心の豊かさは、お金では買えない代わりになくなることもありません。本質は、人が奪い取ることも消すこともできないその人に充満する"愛"だから。

 私たちの無償の財産に、"とき"というものもあります。"とき"はまさに「時」であり、「溶き」であり、「解き」です。人は知らないうちに、それぞれから貴重な恵みを受けているんですね。

「時」は、さまざまな体験を与えます。今という時があるということは、今味わっている体験を与えられているということ。すると、こうして生かされている今という時が、神秘的でいとおしい感じがしませんか。

「溶き」は感情を溶かします。もし苦しみや悲しみが溶けてなくならなかったら、私たちの精神は耐えきれないでしょう。喜びやしあわせの感情も、記憶だけを残して溶け去ってしまうから、私たちは再び得ようと奮起できるのかもしれません。

「解き」はこだわりを解きます。自分の"我"というこだわりが解けていく中で、他の人たちとどうやって共存していくのかを学んでいきます。その先に、いかにして平和や平安を築いていくかという答えを見つけるでしょう。

 ひとりひとりの体験も、味わう感情も、気づきのきっかけもまちまちですが、無償の財産は全員が確かに受け取っています。その恩恵に日々感謝して生きていけば、きっと宇宙の真理にたどりつくと思います。私たちは大自然の一部として独自の今を生きながら、本質は"ただひとつのいのち"であるという真実に。

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Last Updated: 2003/03/28

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