Vol.16

鼻息、荒くないですか?

 私は「憎しみや怒り」の感情は、自分の身体にもっともダメージを与えるんですよ、という話をよくします。その科学的根拠を、実験結果を引用してお伝えしましょう。

 あなたが実験に参加して、液体空気で冷やしたガラス管の中に息を吹き込んだとします。するとガラス管には、揮発性の物質が固まって無色に近い液体ができます。

 そのとき、あなたがものすごく怒って息を吐いたとしたら、ガラス管の中には数分後に栗色のカスが残ります。このカスを実験用のネズミに注射すると、どのネズミも必ず興奮状態に陥るのです。

 もしこの息を吐いた人が、激しい憎悪や怒りを抱いていた場合、ネズミは数分で死に至ります。人の1時間のひどい憎悪は、80人を殺す毒素を出すといわれていて、これは今ある最強の猛毒に匹敵するそうです。

 こんな毒素が、もしあなたの体内にうっ積していったとしたら、悪性の病や死を避けようがないということがわかるでしょう。

 怒りっぽい人は肝臓が弱っているという見方もできるくらい、「怒り」はその人の肝臓を直撃します。肝臓は解毒作用が役割りですから、まさに健康の"肝心かなめ"を痛めつけることになるわけです。

 普段私たちは、息はガラス管ではなく外に吐いていますから、毒素を撒き散らしている人のそばにいたら、息苦しい感じがするのは当然のこと。「あの人の毒気に当てられた」という言葉には、科学的な理由があったのです。

 自分の心身だけでなく、まわりも不健康にしてしまう「憎しみ」や「怒り」はなんとしても軽減したいところですが、強迫観念のように「怒ってはいけない」と思い込むのは逆効果です。抑圧すると、返ってストレスが増幅してしまいます。

 いくら《穏やかに生きるために、怒らない自分を創ろう》と目指しても、社会生活をしていれば腹の立つことだってあります。そんなときは大いに発散してうっ積させないことの方が大切です。そのあと、カラリと晴れた心で過ごせるようにいろいろ工夫すればいいと思います。
「調息」はその1つ。武道や瞑想には不可欠ですが、今では健康法として実践している人も多いようです。深い呼吸を繰り返して、心身にフレッシュな空気を循環させながら気を整え、心を静めていきます。

 現代人は、どうしても頭を過剰に使うために気がのぼりがちです。もしあなたが、息も浅いし気持ちが浮ついていると感じたら、上がった気が落ちて丹田に着くまで調息しましょう。それが、気を「落ち着ける」ということなのです。

 警察につかまったスリの常習犯が、興味深い話をしていました。『鼻息の荒い奴は、いつでもすぐにスレる』というのです。『落ち着いてる人は、息も静かでまわりがよく見えてるんだ。だけど、心ここにあらずの人は息が荒いんだよ。うってつけのカモさ』

 これからあわただしい師走に入ります。寸暇を惜しんで息を整え、せいぜいカモられないように心がけたいものです…。






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