Vol.15

海老に学ぶ

 私が驚いたことの中に「エビの物語り」があります。結婚式やお祝い事の料理には、必ずといっていいほど「エビ」が出てきますが、みなさんはその理由をご存知でしょうか?

 一般には、エビは体が曲がっているから、男女が「ともに腰の曲がるようになるまで長生きして添い遂げましょう」という"めでたさ"の象徴として扱われています。だったら、なぜ夫婦とは無縁の祝宴にもエビが登場するのかということになりませんか?

 実は、エビを重んじるのは、そんな表面的な理由だけではないのです。一般には、エビの殻は固いというイメージがありますが、実はエビは殻が固くなるとすっぽり脱いで、また柔らかくなるんだそうです。

 秋だろうが冬だろうが際限なく脱ぎ続け、生きている限り決して固まらない。エビは、常に自らを柔軟に保っている弾力性に富んだ生きものなのです。

 そこで、≪固まらない=老いない=永遠の若さのシンボル≫として、おめでたい席にエビを用いるということです。みなぎる生命力の象徴だったわけですね。私は、これにはとても深い意味が秘められていると感心しました。

 単に、年令とともに肉体が硬化すれば「老いる」という話ではなく、精神がこわばって固まってくると、私たちは人生を謳歌できなくなることを「殻を脱ぐことの重要性」として伝えているからです。

 人は同じ環境に甘んじていると、こり固まって融通のきかなくなった思考、ようは柔軟性を欠いた自分に気がつきません。会社という型、職業による型、家柄の型、年令の型等々、あなたは何らかの型という殻にはまり込んでいませんか?

 もし、自分に「物足りなさ」とか「あきらめ」、あるいは「頑固さ」を少しでも感じたら、あなたの殻が固くなっている証拠です。この殻を脱ぐのは大変な作業ですが、それをしなければ人生のダイナミズムを味わって生きることはできません。

 みなぎる生命力も豊かな能力も、エビのように殻を脱ごうとしたときに発動されるのです。それこそが、内側からほとばしる「若々しさ」だと思います。 

 そうやってどんどん殻を脱ぎ捨て、最後に1つも型という殻がなくなったとき、地位も身分も財産も一切とらわれのなくなった"あなたそのもの"が顕われてきます。

 外側の条件に左右されない、ゆるぎないあなたの存在意義が明白になって、自分が何者かをはっきりと自覚するでしょう。と同時に、「あなたの生きる信念」もしくは「あなたの信じるもの」が明瞭になります。

 いつもそれを見失わないように、あるいは見い出していくことに気力を振りしぼることが、エビのように生きることです。柔軟な姿勢と弾力に富んだ心身は、その人に人生の苦境を乗り切る力と、変化する自身を楽しむ力をもたらすことでしょう。

 自らを守ろうとして固まるより、自らを活かすために柔らかくなっていくことが、どんなに大切かを再認識した私は、エビを見るたびにこの物語りを思い出して『せいのっ!』と殻を脱ごうと思っています。






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