嘘つきの赤ちゃんはいませんよね。みんな無垢な心で生まれてきますが、自我が育つにつれてエゴの誘惑に負けて"嘘"をつくようになります。子どものころ、親に叱られたくなくて嘘をついた覚えのある人は大勢いると思いますが、当時を振り返ればわかるように、人間は「何かを恐れて」嘘をつくのです。
自分が嫌われることや見下されることを恐れて、その場逃れの嘘をついたとしても、得することは何もありませんよ。たとえ相手をだませても、自分は「嘘だ」と知っています。一時的に満足するのはエゴだけで、"本心=無垢な心"はありのままではいられない苦しみを背負います。
ましてや嘘がバレて後悔したり、罪悪感や自己嫌悪に苛まれたりすると、本心は深く傷つきます。そして、自分を愛せないし自信も持てない苦しみに、身もだえするようになるのです。これが今のあなたの状態です。
「恐れ」は誰の中にもありますが、正直な人は、人生のどこかの時点で「嘘をつかない」という選択をしたんですね。主な理由は、@先にあげた苦しみを味わいたくないから。A自分が嘘をつかれて嫌な思いをしたことがあるから。B嘘をつく人がどんなに嫌われるかを知っているから。C正義感が許さないから。
あなたは元来不正直なのではなく、「嘘をつかない」という選択を今からしようとしているだけですよ。嘘をつかずにどうするのかというと、ネガティブな感情がわいたら「また出たな」と笑い飛ばして"話のネタ"にしてしまいましょう。
たとえば、見栄や嫉妬は、ありのままでは価値がないと恐れる気持ちの産物です。その気持ちを隠そうとしないで披露するのです。「見栄を張りたいところだけど、実は私○○なのよ」「妬けるくらい、あの人はきれいで本当にいい人なの」って。これがあなたの"ありのまま"です。
ありのままでいるとストレスがないのは、嘘をつくという嫌な緊張がなくて心がゆるんでいるから。自分を三枚目に仕立てて、「こんなこと思うなんて情けないでしょ?」「自分でもあきれるくらい怖がりなのよ」といった調子で、ネガティブな感情をさらけ出してしまいましょう。
そのときに注意することは、「ほかの人を悪者にしたり責めたりしない」ことと、「○○さんもきっとそう」と都合のいい予測を付け足さないことです。話すのはあくまでも自分の気持ちだけにしておけば、誰の心も傷つけません。
すると、話を聞いた人が「わかる、わかる」と共感して親近感を覚えてくれるものなのです。中には、「実は私もね…」と打ち明け話をしてくれたり、「あなたって正直ね」と好意を持ってくれる人も現れるでしょう。言ったように、みんな「恐れ」を胸に秘めて歯を食いしばって生きているからです。
子どもたちにも、ママの弱さやカッコ悪さを、むしろ正直に見せてしまうほうがいいと私は思います。これから思春期を迎える子どもたちに必要なのは、完璧な母親ではなく、ありのままでいいんだと感じさせてくれる、人間味にあふれた母親だから。
もう「自分を許せない」なんて考えること自体をやめましょう。過去の体験は、思わず嘘をついてしまう人の気持ちがわかる、やさしい人間、愛情深い母親になるためのプロセスだったのです。自分を責めるエネルギーを、そのことを信じるエネルギーに変えて前に進みましょう。