変わりたくても思うように変われない自分に、情けなさや焦り、苛立ちを感じる……その気持ち、よくわかります。このページを見ている多くの人が、きっと似たような気持ちを体験しているのではないでしょうか。
私もこれまでにどれだけの本を読み、「よしっ!変わろう!」と思って奮い立ち、何度挫折したかわかりません。そのたびに自分を嫌悪し、絶望し、一縷の望みを抱いてふたたび立ち上がる……そのくり返しでした。そんな20年を経て感じることをアドバイスします。
あなたには「もっとよくなりたい」という向上心≠ェあります。「最良の母でありたい」という愛≠ェあります。それが強いがために「まだダメ。これでは足りない」と思ってしまうんですね。自分の心に、人間としての向上心や娘を思う愛があふれていることを、まず認めましょう。
認めたら、次は、これまでの自分を許すのです。「よくがんばった。もう、変わろうとしなくていいよ。このままでいいよ」って。……意外ですか? だってあなたが変わりたいと思うのは、もっと成長して愛の人≠ノなりたいからでしょう? 切実にそう願っている人は、目に見えない速度できちんと成長していくから心配いりません。焦らないで。
あなたが持っている自分を否定する感情の陰には、「こんな母でごめんなさい」という気持ちがあると思います。それを「こんな母にもかかわらず、そばにいてくれてありがとう」に変えましょう。カッとなったらこのフレーズを思い出して、心が落ち着くまで何度でも「ありがとう」ってつぶやいたらいいんですよ。
あなたが産んでいなければ、娘さんはそもそも存在していません。その縁に感謝して、「私の娘に生まれてきてくれてありがとう」と伝えましょう。この言葉は、子どもにとっては最高の宝≠ナあり、ずっと心の支え≠ノなるかけがえのないメッセージなのです。機会を見つけて、ぜひ直接伝えてくださいね。
それを伝えて娘さんがどんな反応をしても、無反応でも、案じることはありません。その人に有益な言葉は無意識の領域に記憶されて、いつか必要になったときに思い出すから。大切なことは、あなたが思い立ったときに「伝えておく」ことなのです。
私が本を書き続けるのもそうした理由からです。本はいっときの刺激剤になったあとは忘れ去られるものですが、その人の琴線に触れた言葉は、いつまでも心の片すみに残ってその人を支え続けると信じています。現に自分がそうだからです。
本を読んで発奮しても、思うようにできなくて胸を痛めるのはみんな同じです。自分を責めることはありません。そこで提案があります。「よくなろうとがんばっているけど、思うようにできなくて苦しんでいる自分」を愛する家族にさらけ出しませんか。
ひとりで苦悩し、その苛立ちを家族にぶつけるのではなく、なぜ苛立ってしまうのかを正直に打ち明けるのです。自分の弱さをそのままだれかに受け止めてもらえたら、あなたはきっと「自分を許してもいいんだ」という気持ちになるでしょう。
成長とは何かというと、がまん強くなることではなくて、どうしようもなく未熟な自分(あるいは他者)を許せるようになることなのです。それが、持って生まれた愛を最大限に生かす道なんですよ。その道を行きましょう。