今の苦しい状態を自分の人生を自由に生きるための通過点≠ニ考えてみましょう。その意味は――このままでは苦しいから、あなたはなんとしても目の前の壁を乗り越えようとする。あなたは今まさに巣から飛び立とうとしている雛なのです。この旅立ちを、ワクワクする体験に変えましょう。
私たちはみんな、自分を産んで必死に面倒を見てくれた母親に頼り、「この人の言うことは正しい」と信じて大きくなっていきます。母親は、そのとき自分が正しいと信じたことを子どもに伝え、それを実行して子どもを育てていくしかありません。
いずれ子どもは成人し、自立のときを迎えて自らの意思で人生を歩きはじめます。それが「自立=親離れ」です。そのときを知らせる合図が親に対する違和感、「親の言うことはいつも正しいと限らない。親の指示通りに生きてもつまらない。自分のことは自分で自由に決めたい」という感情の芽生えなのです。
親離れ自体は、あなたにとってはとても必要なことですよ。なぜなら、親でさえもあなたの人生を肩代わりできないのだから。しかし世の中には、子どもの親離れを歓迎する親もいれば、さびしがってなんとか食い止めようとする親もいます。まずそのことを理解しましょう。
さて、今あなたの心の中には、「自立したいけどこわい。うまくいくかどうか不安だし、自信もない」という気持ちがありませんか? すると、頭では親に反発しながら現状を変えられない自分にイライラしはじめるんですね。
親に対する嫌悪感は、じつは、自由にあこがれつつも勇気のない自分に対する嫌悪感なのです。それを「親のせい」にして、親を避けたり逆恨みしたりすることは、本来はまったく意に反することですよね? だから苦しいのです。
でも、それがわかればもう心配いりません。大事なことは「上手に親離れするぞ!」としっかりハラをくくること。これまでなんでも母親に頼っていたことを、これからは自分の意思で決めるのだから、最初はこわくて当たり前、自信がなくて当然です。
だけど、自分で決めるからには、うまくいってもいかなくてもすべては自分の責任ということをきちんと肝に銘じてください。「しくじったらそこから学ぶ」「もっと工夫して納得のいくまでやり直す」という覚悟があってはじめて、自由にのびのびと人生を生きられるようになるんですよ。
母親には「自分で決めてやってみたいから見守っていて」と伝えられたらいいですね。それでもあれこれ口出しする親がいるのは、どうしても心配だからです。親にとって子どもの親離れは、親が子離れ≠キるときでもあり、一抹のさみしさを覚えるものなのです。
そんな親心を少しは汲み取って、何か言われても嫌な顔をしないで「参考にするわ」と笑顔で応えられるようになりましょう。そして親の言葉も考慮し、あとは自分の意思を貫くことに集中するだけ。途中で投げ出さないことです。
人生の最大の教師は自らの体験≠ナす。あなたは一度しかない人生で何を成し遂げたいのか、どんな人間になりたいのか、それを真剣に考えて自分の道を選んでください。その道を突き進み、転んだら立ち上がり、そのたびにたくましくなっていくから。
いつの日か、たくましく成長した自分の姿を親に見せて安心してもらうことが、本当の親孝行だと私は思います。