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カウンセリングメッセージ

Vol.07 「逃げてしまう癖を治したい」

From  Sさん

就活中の大学生です。私はいつも「もうひと踏ん張り」ができずに悩んでいます。幼少期の習い事、部活、アルバイト、果ては大学の教職課程も続けることができませんでした。幼少期には絵を習っていたのですが、親に金銭面で負担をかけていることと絵では食べていけないことを思って辞めてしまいました。部活やアルバイトでは、最初に先輩から暖かい言葉をもらって頑張ろうとしたのですが、その期待に応えられなかったらどうしようと思うと怖くなり、また辞めてしまいました。そんなことを気にせずにやればいいことは分かっているのですが、いざアルバイト先や部室に行こうとすると、緊張して体が思うように動かなくなります。いつも一緒に頑張ろうといってくれる人たちを裏切ってしまう自分が嫌です。ずるずる逃げてしまうこの癖を治したいです。どうしたらいいでしょうか?

「もうひと踏ん張り」ができない自分、「ずるずる逃げてしまう癖」のある自分……、そんな自分を責めて嫌っているようですね。でも、それは"解決の方向"とは違うから、体がこわばって思うように動かなくなるんですよ。

 自分の気持ちを正確に理解することが、解決の道につながります。まず本当の気持ち=本音を把握しましょう。それがわかれば自分を導くことができるから。もともと自分には「ずるずる逃げてしまう癖」などないことが、きっとわかるでしょう。

 あなたが逃げ出すのは、心の中に逃げ出したくなる理由があるからなのです。それを無視して、頭でいくら「もうひと踏ん張りするべき」と考えても同じことをくり返すだけです。逃げ出したくなる理由を知ることが先決。

 絵をやめたことを例に考えてみましょう。「親に金銭面で負担をかける」「絵では食べていけない」と書いてありますが、これは頭で考えたことですよね。心はどう感じましたか?絵に飽きた? 通うのがいやになった? 自信を持てなかった? 親の期待に応えられそうになくて重荷になった? ……ほかにありますか?

 人間の行動は、感じることが先で、考えはあとから付随します。あなたには絵をやめたくなった本音があったはず。だけど「それはよくない」と頭で判断し、大義名分を持ち出して自分自身とまわりを納得させたのだと思います。

 あなたに直すべき心の癖があるとすれば、本音にフタをして"建て前の自分を本当の自分と思う癖"ですよ。教職課程も、やめたくなった本音を振り返ってみてください。試験がうまくいかなかったらどうしようと恐れて? それとも、教師になる自信がわいてこなくてこわくなって? 本音を知っているのは自分だけです。正直になりましょう。

 正直な気持ちに「いい・悪い」はありません。本音は本音、責める対象とは違うのです。そこであなたにやっていただきたいことは、自分が逃げたと思う過去の事柄について、きちんと本音を把握すること。そして「そうだったんだ、わかったよ」と言って、そのときの自分をただやさしく受け止めることです。

 あなたは、本当はありのままの自分を見せて許されたかったはずなんですね。でも、それでは親やまわりの期待に応えられないからがんばった。だけど結局、喜びがないからやめたのだと思います。その自分を責めずに、今受け入れ直しましょう。これは、当時のありのままの自分を認めて心の傷を癒すという大切な作業です。

 ていねいに本音に耳を傾けていくと、ほかの人の思惑とは別に、あなた自身が本当にやりたいことを見つけられるかもしれません。心から喜んでできることを見つけたら、何度つまずいても勝手にもうひと踏ん張りしたくなるものです。その場合は、理由が生じてやめることになっても、納得してやめられるでしょう。

 これだけは覚えておいてください。人生は、失敗するとやった意味がなくなるわけではありません。あなたは、完璧にできないと価値がなくなるわけではありません。あらゆる体験を通して、あなた自身が人間的な成長を遂げることが人生の目的なのです。

 社会に出れば、さまざまな人間(価値観)にもまれるでしょう。だからこそ、しっかり自分の本音を把握して、自分を見失わないようにすることが本当に重要になってきます。そして、自分の気持ちを偽らない範囲で、人に譲ったり合わせたりできるようになってください。そうすれば、きっと人生はうまく流れていきますよ。

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Last Updated: 2013/07/17