先月に引き続き、数多く寄せられる相談から「人の顔色をうかがってしまう」ことについてもう少し考えてみたいと思います。
実は、私も人から嫌われるのが怖くて、「どうしたら嫌われずにすむだろう」とそればかり考えて、人の顔色をうかがって長いあいだ過ごしたんですよ。本心を言えないまま終わることもしょっちゅうでした。
そんなふうにして人生の半分を送ったから、あなたの気持ちはよくわかります。そんな私が大きく変ったのは「このままでは本当の自分を生きられなくなる!」という危機感を持ったことがきっかけでした。それをお話しましょう。
人の顔色をうかがうのは、自分の感情や言いたいことを押し殺してでも人に好かれたいという気持ちがあったから。それは特に悪いことではないとしても、過剰になれば本当の自分でいられない息苦しさを感じます。そう、今のあなたのように。
私も「もっと自分に自信を持てれば……」と思いました。でも、自信は自動的にわいてくるものではありません。さまざまな体験を積み重ねて「この自分を信じればいいんだ」という気持ちになると持てるもの。それが「自信=自分を信じる気持ち」なのです。
私はハタと気づいたんですね。「自分は人に嫌われないように気を遣って、自分に嫌われている。自己嫌悪のかたまりじゃないか」って。自分が本気で好きになれない自分を、人が本気で好きになってくれるはずがないと思ったら泣けてきました。
それで、10人いたら10人から好かれたいと思うことをやめようと決心したのです。上辺だけ仲が良さそうに振る舞う人より、本気で自分を好きになってくれる人を、ひとり見つけようって思ったのです。
それには普段から本当の自分を見せるしかありません。こわいし、勇気が必要でした。そこで試みた方法は"枕詞"をつけて話しはじめること。たとえば、「こんなこと言うと嫌われちゃうかもしれないけど……」とか「あきれないで聞いてくれる?」と言ってから話すと、本音を言いやすくなりました。
するとまわりの人たちは、そんな私の発言を"ひとりよがり"ではなく、本当の私を理解しようとしてちゃんと耳を傾けてくれたのです。そのうえで反対意見を言ったり、中にはきびしいことを言う人もいたけれど、それは「聞けてよかった」と思う人の気持ちだったり、ありがたいアドバイスばかりでした。
本当の自分を出して本音でぶつかれば、人もまた本音で返してくれるものなのです。もしそれで離れていく人がいたら、友だちでいる必要のない人だと思います。建前ではなく、本音でかかわってくれる人の中から真の友人を選べばいい。その人にならば、あなたは安心して「こんな私どう思う?」と尋ねられるでしょう。
あなたはもともと人の気持ちを汲み取ることのできる人だから、その力を、人の顔色をうかがうためではなく、相手の痛みや悩みを汲み取るために使ってください。自分のことはさて置いてそれができると、よき理解者になれると思います。
そうなったら自分を認めることができて、そんな自分をきっと好きになるでしょう。それが、本当の自分を生きられるようになる出発点なのです。けしてむずかしいことではありません。だれからも好かれようとしないことからはじめればいいんですよ。