ご主人は、妻子に対して不甲斐ない自分を激しく責めていると思いますよ。しかし、責めるほどかえって苦しみが増すので、自分でもどうしたらいいのかわからないのでしょう。病院へ行かないのは「自分は間違っていない」という気持ちに固執しているためです。「間違っているからこうなった」と認めることがこわいのです。
特にこの一年はものすごくムリをしてきたから、本当はヘトヘトのはず。そんな彼が心の奥で求めているものは"許し"だと思います。「あなたは十分がんばった。もう変わっていい。新しい生き方を求めていいのよ」と、心から労わられ、許されることなのです。
だったらなぜ妻の言うことを聞いてくれないのか、とあなたは思うでしょうね。あなたが「私も働くから、仕事辞めてもいいから元気になって」とどんなに言っても聞き入れてもらえないのは、もしかしたらあなたの無意識に、ご主人を許せない気持ちが潜んでいるからかもしれません。
あなたもこれまでに傷ついて、今でもつらい思いをしているから、無意識に許せない気持ちを抱いてもやむを得ないと思います。でも、ここで自分の気持ちを「彼がこのまま回復してくれないと困ってしまう」から「彼が一番苦しんでいるときに心から愛してあげたい」に変えることができたら、きっと事態は好転しますよ。
一見、彼が問題を抱えているように見えても、夫婦の問題は、自分自身の問題です。パートナーは自分が秘め持った感情を映す鏡であり、その反応は自分がいかに相手をコントロールしようとしたかの結果なのです。つまりこういうこと。
あなたの中に「嫌いになって離婚できたらラクかも……」という感情があると、相手の中に嫌いになる要素を見つけたり、離婚しようと言い出すよう、無意識に仕向けてしまうんですね。彼はそんなあなたに抵抗しているのかもしれません。
別の角度からいうと、あなたは今自分の人生において、人間としてもうひとまわり大きくなり、真実の愛に目覚めるチャンスを迎えているのです。
夫婦という密な関係には、どちらが被害者でどちらが加害者という構図は当てはまりません。両方に正当な言い分があってしかり。だから、どちらが正しいかということにとらわれず、自分が本当に人を愛せるかどうかを試されている、と考えてみませんか。
さあ、眠ったままの愛を起こしてください。闇の中で自分を見失いそうになっているご主人に、どんな言葉をかけますか? 義務感からではなく、本当に愛しているから出てくる言葉は、きっとやすらぎを与えるでしょう。それはもしかしたら「あなたが仕事をやめても、私があなたを愛する気持ちは何も変わらない」「世界中の人が敵に回っても、私はずっとそばにいる」といったことかもしれません。
傷ついた心は、真実の愛に触れると安心します。そして、素直に感謝できるようになるんですね。彼の心を溶かすものはあなたの愛なのです。そのままの彼を認め、信じ、これからどうなるんだろうと悲観的に考えるのではなく、これからどうやって幸せを築いていくんだろうと楽観的に考えてください。
わが子に愛ある家庭を残したいなら、ここが正念場ですよ。あせらず、彼を恐れないで許しましょう。万一、ふたりの将来に別離が待ち受けていたとしても、自分はやれるだけのことはやったという気持ちがとても大事です。そうすれば、悔いは残らないと思います。