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カウンセリングメッセージ

Vol.9 「嫌いになりたいです」

From  ゆきさん

好きになってはいけない人に恋をしました。思いを抑えきれなくなった私は「恋心」を「ファン心」に変えました。ファンでいればいい。ただ好きでいられるだけでいいって。でも、体調を崩して起き上がれなくなって病院へ行くと、原因は"ストレス"という診断でした。私は思いを断ち切れば楽になると思って、無理やり嫌いと思い込もうとしました。「もう飽きた」「気持ち悪い」と友達にも言っていたら、意外にも簡単に彼と遠くなれたんです。でも今、なぜか心に穴が開いています。自分が何をしたいんだかわかりません。前に進みたいのに恋心が消えません。もうすぐ受験です。彼に応援されてほめられるのが嬉しくて頑張ってきた勉強も、全然身に入りません。新しい未来に向かって頑張りたい自分とそれができない自分が混在して、吐きそうです。何かアドバイスをいただけたら嬉しいです。

 あなたのストレスは、彼を嫌いになれないことにあるのではありません。自分の心を偽っていることにあるんですよ。吐きそうなほど胸が苦しいのは、"本当の気持ち"を胸の奥に閉じ込めてしまったためです。

 本当の気持ちを閉じ込めると、心に穴が開いたような空しさを覚え、何をよりどころに進めばいいのかわからなくなるでしょう。なぜなら、本当の気持ちとは、本当の自分のことだから。今のあなたは本当の自分を見失ってしまった状態なのです。

 頭が先行して「こうするべきだ」という理屈を立て、本音を無視したり、本心を偽ったりすると、そういうことが起こりやすいんですね。しかしその状態から抜け出すことは、けしてむずかしくありません。これを機に、ぜひ自分自身との上手な付き合い方を覚えてください。

 まず、心の交通整理をしましょう。――あなたは恋をしました。彼は自分を応援してほめてくれる素敵な存在。でも、なんらかの理由があってあなたは離れようと決意します。と、ここまではいいんです。問題は、そのために選んだ「手段」にあります。

 彼を無理やり嫌いになろうとしたこと。それで彼のことを友だちに悪く言ったこと。この2点です。これはあなたの本心に反しますよね。しかも、あなたも彼もハッピーにしない手段です。これを改めましょう。

 恋をすると、プラスの感情とマイナスの感情を同時にかみしめる体験をします。たとえばそれは、うれしさとさみしさ、勇気と不安、ときめきと嫉妬、やる気と何も手につかない気分……などなど。幸福感をもたらすプラスの感情と、不幸感をもたらすマイナスの感情は、心の中でたえず揺れ動きます。

 彼から離れて自分が不幸感に陥らないようにしたいと思ったあなたは、恋心を根こそぎ葬ればマイナスの感情から逃れられると考えて、彼を嫌いになろうとしました。でも、あるものを「ない」と思い込むことも、好きな人を「嫌い」と思い込むことも、自分をあざむくこと。だからいっそう苦しくなったんです。

 さあ、心のギアを入れ替えましょう。――あなたが恋をしたことは、喜ぶべきことです。好きで好きでたまらない人には、そう簡単に出会えるものではないから。恋は、人生にある日突然与えられるギフトなのです。あなたがその人と楽しい時間を送れたなら、脳裏には幸せな記憶が残っているはず。

 今あなたがするべきことは、「恋ができてよかった」と素直に喜ぶこと。そして、素敵な思い出を残してくれた彼に感謝することです。心の中で「出会って育ててくれてありがとう」と何度も伝えましょう。

 そうやって心の中をプラスのエネルギーで満たして、恋をいい思い出で終わらせることがとても大切なのです。喜びと感謝は、どんなにふくらませてもだれも不幸にしません。それどころか、あなたをずっと幸せな気分にしてくれるでしょう。

 人間は、感謝すればするほど前に進む活力が生まれてくるようになっています。このことは恋に限らず、人生全般に言えることです。この先の長い人生でどんな体験をしても、何事も"成長の糧"と考えて感謝する心をなくさなければ、あなたはもう自分を見失うことはありませんよ。

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Last Updated: 2012/09/17