毎年この時期には、あなたのような気持ちになる人が必ず現れます。それは、社会に出ればだれもが一度は味わう"社会のきびしさ"でしょう。私も味わいましたよ。でも、今振り返って思うのは「最初に怒られておくほうがいい」ということです。
あなたが言うように、慣れない環境で一から仕事を覚えるのですから、最初からうまくいかないのは当然。そんなことは上司も十分わかっています。そこで、手取り足取りやさしく教えるか、怒って恥をかかせて覚えさせるか、それは個々の流儀の違い。
しかし会社側には、悠長に構えている余裕はありません。新人にはすでに給料を支払い、一日も早く一人前に働いてもらわなければ困るわけです。だから、怒ってでも早く仕事を覚えさせようとします。ところが怒られることに慣れてない人は、まるで自分を否定されたように感じてしまうんですね。
新人として怒られる期間はごくわずか。あなたがどんどん仕事を覚えれば、同じことで怒られなくなります。そんな大事なときに余計な感情を持ち出して、相手に苦手意識を抱いたり、転職したらどうなるかなどと考えていてはいけませんよ。今は仕事に集中することが一番重要です。
この期間をうまくやり過ごすために、怒られることについてはこう考えましょう。「自分は脈があるから怒られる」「一度きっちり覚えれば、同じことでは二度と怒られない」「怒っている上司も、新人のときには怒られた」って。
半年も経てば余裕が生まれ、"注意の仕方"を観察できるようになるでしょう。そのとき、「怒るのは"愛の鞭"なんだ」と気づくかもしれないし、相手を反面教師にして「私なら後輩にこんなふうに指導する」と思うかもしれません。
でも今は、悔しさをバネにして懸命に仕事を覚え、教えられた通りにやることに全力を注いでください。じきに、いやでも自分で工夫してやっていくしかなくなるし、その仕事を任されて責任を負うようになるのだから。
怒られる体験をプラスに取り込むには、どんどん質問することです。新人の特権は何を聞いても許されること。どんなバカげたことでも聞けるのが新人の強みなんです。一歩でも先へ進むためには、ひとつでも多く聞く。わからないことをそのままにしておかないで、素直に「教えてください」と言いましょう。
別の言い方をすれば、上司にはそんな"怒りがいのある新人"がうれしいんです。あなたがそれだけ打ちのめされているということは、本気にならざるを得ない状況に置かれているわけでしょう? 怒られるたびにますます本気になって向かってくる新人が、やる気のある新人と見なされるんですよ。
人生の流れというものは、いっときも留まることがありません。困難にぶつかったときはいつでも、今回同様、自分が成長できるチャンスなのです。人間としてひとまわり大きくなりたいと思うなら、目の前にある"生みの苦しみ"から逃げようとしないこと。
自分が成長すれば、あとでかみしめる喜びも必ず大きくなります。それを信じて、「苦しいよー! だけど受け入れて絶対に乗り切ってみせる!」という気概で挑みましょう。