あなたはしっかりした人なので、今になって怒りがわき起こる理由がわかれば、きっとその背景にある憎しみを乗り越えることができるでしょう。それには、心の交通整理が必要です。主人公は"あなたの深層意識"です。
浮気を打ち明けられた当初、"あなたの深層意識"は「夫が浮気相手に失望している」こと、「夫が妻である自分を選んだ」ことにちょっと満足したんですね。また、その女性から家庭を守ることが優先課題だったので、力を合わせて危機を乗り切ろうと協力を惜しみませんでした。当然、ご主人はあなたに感謝したでしょう。
しかし平穏な生活が戻ってくると、"あなたの深層意識"は大切なものが取り残されてしまったことに気がつきます。それは、ズタズタに切り裂かれた妻のプライドでした。
――夫に裏切られたかわいそうな私は、傷ついたまま泣いているというのに、夫はまるで何事もなかったかのような顔をしてのうのうと暮らしている……。やりきれない妻の気持ちを少しも察しようとしない夫が憎い。頭にくる。ジェラシーも収まらない。
かといって、今さら浮気問題を蒸し返し、執念深いとあきれられて夫に嫌われたくない。夫の感謝を踏みにじるまねもしたくない。でも、感情を抑えきれなくて思わず態度に出てしまう。気まずい関係にはもう戻りたくないけれど、どうしたらいいのかわからない。
その一方で、やり直すと決めたのに、いつまでも夫を許せず悶々としている自分がうらめしい。つい心のすみで自分を責めてしまう。――これが、無意識を含めた今に至るあなたの気持ちだと思います。
"怒り"は"悲しみ"の代名詞です。あなたは、本当は怒っているのではなく、心が切り裂かれてしまった悲しみを抱えたまま、行き場を失って苦しんでいるのです。あなたの内側ではまだ終わってない、悲しみの問題を解決しましょう。
最初に、心に沈殿している悲しみをしっかり感じてください。それを受け入れて「つらかったね」とよーく慰めます。そのとき「私は被害者だ、私は悪くないのに」という感情を決してかき立ててはいけません。傷ついた心をただ抱きしめれば、痛みは羽がはえて飛んでいきますよ。
次に、心に張り付いている「私は被害者だ」という考えを取り下げます。実際に浮気をしたのは夫でも、浮気に走らせたのは自分かもしれないのですから。夫婦間のキレツは、どちらが悪いという問題ではなく、夫婦の絆をもっと深めるために、ふたりで乗り越えなくてはならない試練と考えましょう。
夫を責める前に、自分は妻として、どのくらい深い愛を持っていたかを振り返ってみてください。どんな言葉や態度で接していましたか? 心から大切に思っていましたか? 支えになっている夫に感謝していましたか? 自分から愛を注いでこそ、幸せな夫婦関係は築かれていくのです。それをこれから本気でやりましょう。
許すということについていえば、実はあなたが許せないでいるのはご主人ではなく、"自分が裏切られた体験をしたこと"なんですね。それだけつらい体験だったのです。今改めて、自分の体験を許しませんか。それを許すことができると自愛がよみがえります。
あなたが自愛を取り戻せば、それが心の傷を癒し、その愛が外にもあふれ出して他者への愛になっていくのです。「うんと幸せになろうね」って自分と約束してください。そんなあなたの変化は、ご主人もきっと感じるはず。あなたが自愛をよみがえらせた結果、信頼とご主人の誠の愛を手に入れることができるんですよ。