離婚というものが、どれほどエネルギーを奪うたいへんな事柄かということかは、私も経験したのでよくわかります。子どものためにも、必死で前に進もうとしているあなたのふたつの疑問にお答えします。
ひとつ目は、『過去の出来事を思い出してくよくよしそうになる』ことについて。――あなたは今まさに人生をやり直そうとしているところですが、「おわり」はいつも「はじまり」。このふたつは背中合わせでやってきます。
たとえば、「いざ前向きにがんばろう」と思えば「あんなつらい目に遭わなければこんなことに……」という気持ちがセットで浮かび、子どもの顔を見て「息子のために笑顔でエネルギッシュな母親でいよう」と思えば「父親と暮らせなくしてもうしわけない」という感情が同時に心を占拠します。
こういうことが起こるのはごく当たり前のことなのです。そこで自分を責めて、うしろめたい気分に陥らないように気をつけてください。おわったことをマイナスに考えれば、エネルギーを失っていくだけです。
あなたはあなたなりに精一杯生きてきたんですね。その結果、離婚に至ったとしても、あなたを母親に選んだ子どもは、それを自分の環境として生きていく強さを備えています。そのことを信じてください。だから、子どもの顔を見て言うのは「ごめんなさい」ではなくて「ありがとう」。「生まれてきてくれてありがとう」ですよ。
その言霊があなたを元気にしてくれると思います。心の中で「ありがとう」とささやけば、自然に笑顔になれるはず。「生まれてきてくれてありがとう」「いっしょにいてくれてありがとう」と、子どもがまだ言葉を理解しなくても、声をかけて育ててくださいね。それが幼子の心を幸福にします。
ふたつ目は、『離婚に反対する実父が当たるのでつらい』ことについて。――「私は好きで離婚をするわけでない」とありますが、「私が今どんなにつらくてたいへんか、親ならわかってほしい」というのが本音だと思います。
でも、自分の気持ちをちょっと横に置いて、お父さんが当たるわけを客観的に考えてみましょう。お父さんには「娘には幸せな家庭を築いてほしい」という願いがあり、「夫婦そろって孫と三代で楽しく過ごす」という理想があったと思うんです。
それが壊れた無念をどうすることもできずに苦しんでいるのかもしれません。人間は、苦しくなければ人に当たったりしませんから。さらに、これから娘が苦労するだろうと思えば、なんとかならないかと熱くなってしまうのではないでしょうか。お父さんはそんなふうにしか気持ちを表現することができないのです。
もし、お父さんが離婚に対してもっとポジティブな発想をし、あなたの気持ちを優先して考えることができたら事情は違ったでしょう。でも今、そうでないお父さんに苛立って対立することは、あなた自身が傷ついていくだけでなく、娘としてのちのち悔いを残すことにもなりかねません。
今、お父さんにかけるべき言葉は「ごめんなさい」だと思いますよ。期待に添えず心労をかけてもうしわけないという思いと、「自分の人生は自分の責任で切り開いていくからそっと見守っていてほしい」というお願いを、お父さんの気持ちに寄り添いつつ、はっきり伝えましょう。そうして心をすっきりさせてから、力強い一歩を踏み出してください。