たいへんな状況をよく乗り越えましたね。あなたが苦しみ涙した体験は、決して無意味ではありません。それは息子さんにとってもです。その体験の意味を息子さんに伝えることが、今後のあなたの役割になるでしょう。
大前提として、『子どもは自分で親を選んで生まれてくる』という考え方を受け入れてください。息子さんの魂はあえてあなたを母親に選びました。あなたは子どもとともに生き、幸せとは何かを肌で伝えられる人だからです。病気はそのための試練ですから、自分を責めてはいけませんよ。
息子さんの幸せを何よりも願う気持ちはわかりますが、あなたはひとつ考え違いをしています。それは「私はどうなってもいい」と思っていることです。そして「自分自身をとても憎んでいる」ことです。
幼い子どもにとって母親は不可欠な存在であり、愛してやまない人です。その大好きな母親が病に苦しむ姿を、息子さんは10年も見てきました。たとえ、八つ当たりされても、やさしく抱きしめてもらえなくてもガマンできたのは、母親の苦しみを自分の苦しみとして受け止めていたからだと思います。
幼子の心は目に見えない糸で母体とつながっていますから、息子さんはあなたのことが心配でたまらなかったはず。母親の作り笑顔はすぐに見破ります。本当に幸せそうに笑う母親のかたわらにいることが、彼の幸せなのです。
いいですか。「私はどうなってもいい」ではなく、「私は今度こそ自分を大事にする」と思ってください。今度こそ"自分"を幸せにしてください。それは"息子の大好きな母親"を幸せにすることであり、彼を安心させる唯一の方法です。
「自分自身をとても憎んでいる」ことも同じですよ。「私は息子を愛せる自分に戻れてありがたい」と感謝しましょう。
次に、具体的にできることをアドバイスします。幼い息子さんの心は傷ついていると思いますので、傷を癒す言葉を毎日かけてあげてください。『私の子どもに生まれてくれて、本当にありがとう』『あなたを産んでよかった、あなたのママになれて幸せよ』――これは子どもの心を強くする"ミラクルワード"です。
人間は心に傷を負ったまま大人になると、壁にぶつかったとき、自分の価値がわからなくなって心がすさみやすいんですね。折れそうな心を支えるものは「親から愛された」という記憶です。だから、母の愛を、記憶に残る言葉で子どもの胸に焼き付けておくことはとても大切なのです。
"スキンシップ"もたっぷりしてください。「抱きしめる」「手を握る」「肌をさする」という行為を毎日しましょう。思春期になれば、たぶん「もういいって」と照れていやがるでしょうから、それまではぜひ続けてください。
"ミラクルワード"と"スキンシップ"は子どものためですが、実はあなた自身を癒すためでもあります。やさしさを言葉や態度で表わすとき、あなたの中から愛があふれます。心が愛でいっぱいになればなるほど、幸福感を得られるでしょう。
息子さんと話をするときは、弱くて頼りない母親のままでOK。本音を語り合ってください。彼はその体験を通して人の痛みを理解し、何が幸せかを学ぶでしょう。そしてきっと、人を労わることのできる心豊かな人間に成長していくと思います。