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カウンセリングメッセージ

Vol.10 「前に進みたいです。」

From さくらさん

念願の医療事務の仕事に3月から就いていたのですが、先月で辞めることになりました。それからかなり時間が経つのに、心の整理をしているつもりが、辞めることになった出来事を忘れることができません。それを思い出すと、イライラして落ち着かなくなったり、変な夢を見たりして寝た気になれません。こうなってしまったのは、ぜんぶ自分のせい。日頃から職場の人たちともっといろいろな話をしてコミュニケーションをとっていれば、大丈夫だったのかもしれません。自分のことを可愛がってもらいたかったのなら、もっと自分から働きかけなければいけなかったんです。ぜんぶ自分が悪かったんです。 周りの目も気になり、自分でもそろそろ次の仕事を考えようと思うのですが、かつての出来事を思い出して、なかなか前に進めません。どうしたら、たとえ思い出しても「こんなこともあったな」って、ただ思えるようになりますか?

 あなたは今たいへん重要なポイントに立っていると思います。それは、まさに幸不幸を左右するような人生の分かれ目。これから説明することをしっかり理解してくださいね。

 仕事を辞めるに至った経緯はわかりませんが、人生に起こったつらい出来事を、他人や組織のせいにしないで「ぜんぶ自分のせい」と考えることは『◎』です。でも、ぜんぶ自分が悪かったと「自分を責め続ける」ことは『×』ですよ。

 ふたつの行為は似ているように見えてまったく違います。その違いが、前に進むために不可欠な「自分を許す」という次のステージに、行けるかどうかを決めるのです。詳しく説明しましょう。

 悪かった点を反省してその体験から学ぶことができると、不本意な自分でも許そうという気持ちが芽生えてきます。ところが、自分が悪かった点を責めてその体験を悔やんでいると、自分に対する怒りがくすぶり続けます。心の中で自分を責めているので、イライラして不快な夢まで見るようになってしまうんですね。

 あなたは反省もたくさんしていますが、それ以上に自分を責めて、自分に怒りを感じているように映ります。その怒りを手放しましょう。手放すコツは「自分を認める」こと。念願の仕事を失った自分、うまくコミュニケーションを取れなかった自分、いまだに前に進めないでいる自分を、それでもいいと受け入れましょう。

 周りの人に可愛がられていい仕事をしたかったのだから、悔しいのは当然、自分を許せない気持ちもわかります。でも、それはもうすべて過ぎ去ったことです。私たちは毎日「過去」を生産しながら「今」を生きています。よかったことも、悪かったことも、その記憶だけを残して終わっていくから、新しい「今」に出会えるんです。

 あなたが前に進めないのは、その「今」を、記憶を蒸し返すことに費やしているから。心の中で自分を罰し続け、新しい「今」を新たな苦しみを生み出すことに使っているからです。「過去」を口実にしてはいけません。心のギアを入れ替えましょう。

 自分が成長していくプロセスが人生ならば、未熟な自分にかかわってくれた人たちは、自分の学びに一役買ってくれたありがたい人たちと言えます。その人たちのおかげで貴重な体験ができたと、素直に認めませんか。素直に認めれば、感謝の気持ちが生まれてきます。感謝の気持ちが生まれれば、心は自然に落ち着いてきますよ。

 もうひとつ、あなたが味わうどんな感情にも"魂からのメッセージとエール"が込められています。私たちは自分の成長に必要のない体験はしません。あなたがそのことを自覚するのは少し先になるかもしれないけれど、今はそれを信じて、その場その場の自分を受け入れていきましょう。

「理想の自分」と「現実の自分」にはギャップがあって当たり前。理想通りに動けなかった自分をそろそろ許してください。そして、しょんぼりしている「現実の自分」に温かく寄り添ってください。それが、想像上の自分ではなく、生身の自分を愛するということなのです。

 生身の自分に早く働ける場を用意して、新しい「今」をもっと楽しく生きられるように応援しましょう。また、新たな不安に取り込まれて心が萎縮しないように「何があっても私は私を愛し続ける!」という誓いを立てましょう。これであなたはもう大丈夫ですよ。

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Last Updated: 2010/10/17