私たちは人生のどこかで挫折や絶望をかみしめますが、まわりのやさしさに支えられて再びよみがえります。その苦しみのさなかに「自分は何のために生きるのか」と真剣に自問し、与えられた命を生き抜こうと決意する。それが人間の生命力だと思います。

　苦しみの形は人によって違いますが、失恋、失業、破産、大病、裏切りなど、どれもが人生のピンチに見えて、実はそれと向き合ったときがチャンスなんです。

「もう一度前向きに人生を歩んで行きたい」と訴えるあなたは、今まさに人生のピンチをチャンスに変えるときを迎えていると思いますよ。それを実現するために、あなたにぜひ気づいてほしいことが２つあります。

　１つは、『時間は戻せないし、戻す必要はない』ということ。その自覚を持ちましょう。あなたは「この5年で失ったものを取り戻したい。できればやり直したい」と思っているように見受けられます。そんな気持ちから、好きだった人のことや復学することに心を奪われ、思考の迷路をさまよっているのでしょう。

　あの時点からもう一度違う人生を生き直したいと思う気持ちはよくわかります。でもこれだけは断言します。あなたはこの5年間、そのときにしか体験できないことをしっかり味わって生きてきました。苦しみと引き換えに、人間の弱さや求めてやまないもの、逆に人間の強さや他に与えられるものを肌で感じてきたはず。

　あなたに必要なのは、そんな体験を経た自分が"その先"を生きようとする気持ちです。時間を戻したいと願うことではありません。今だからこそ選べる第二の人生を、生まれ変わった気持ちで堂々とスタートさせる！という気持ちが大切なのです。

　2つ目は、『努力や熱意だけじゃどうにもならない』という考えを捨てること。幸せは、お金や権力では買えませんが、努力と熱意があれば必ず手に入ります。あなたのひたむきな努力と熱意を何に注ぐか、それが問題なんですよ。

　あなたは「幸せは形ではない」と頭でわかっていながら、実は形にこだわってはいませんか？　幸せな形＝既存の人生に、自分の人生を当てはめる必要はまったくありません。自分という人間はもともと幸せな存在なのだと気づいて、そのことに心から"感謝する"ことが、あなたが幸せになる最善の道だと思います。

　具体的に言うなら、「こんな自分でも生かされている」「こんな自分でもだれかに待たれている」ということ、「こんな自分でも役に立てる」ことに思いをはせましょう。それを感じることに熱意を注ぎましょう。本気でありがたいと感じたときに、あなたは変わります。

　またそのときに、自分がやりたいことや、この先の人生に求めるものもはっきりするでしょう。それは他人が決めるのではなく、あなたの心に浮かび上がってくるものだから。それをつかんだら、今度こそその気持ちを無にしないよう努力してくださいね。

　人生は、あなたが思い描いたように進んでいきます。それはあなたが恐れたように、もしくは信じたように、という意味でもあります。だから決して「どうせうまくいかない」と決めつけたり、「幸せになれないかも」と恐れてはいけません。

　あなたの体験は、これまでも、そしてこれからも、本当に価値あることがらを発見するためにあるのです。「私の人生は、喜びと感動と感謝を味わうためにある！」と信じて進んでください。そこから心が離れないようにして毎日を大切に生きていきましょう。