相手のつらい胸のうちがわかったとき、それが恋人でも友人でも、なんとかして励ましたいと思いますよね。でも、そこで言葉を選ぶことに時間をかけてしまうと、せっかくのあなたの気持ちが伝わらなくて「冷たい人」と誤解されかねません。
そんなときは、「うまく励ましたい」とか「今は何を言ってもだめかな」とか「逆切れされたらどうしよう」などといったことを一切考えないほうがいいんです。なぜなら、それによってせっかくのあなたの思いやりが、我に転じてしまうからです。
「うまく励ましたい」「今は何を言ってもだめかな」「逆切れされたらどうしよう」という思いの中身を確認してください。全部、自分の立場からのことでしょう?
そうではなくて、自分の思いやりを、思いやりのままそっくり手渡すことがとても大切なんです。つらい状態の相手がまず求めているものは、感心するようなあなたの言葉ではなく、あなたの温もりに包まれることだから。
あなたは、落ち込んでいる相手を前にして『黙って話を聞いているしかなかった』と書いていますが、これはすばらしいことですよ。あなたの心に愛があれば、それだけで相手はあなたの温もりを直接感知して癒されていくことでしょう。
黙って話を聞くということは、黙って傷ついた相手を受けとめてあげるということです。ただし、聞き手の心の中が問題。「がんばれ!」「大丈夫、必ず乗り切れるよ!」とエールを送ってあげましょう。相手はおそらく、まだそうした言葉に素直にうなずける状態ではないからこそ、黙ってはけ口になってあげながら。
次に、メールや電話で相手がつらさを訴えてきた場合。これも心に愛があれば、その思いをただ表現すればいいと思います。そこで「どんな励ましの言葉がいいか」と頭で考えはじめるとわからなくなってしまうんですね。
覚えておいてください。傷ついた相手に必要な"励ましの言葉"は、気が利く名ゼリフではありません。心に沁みるような真心なのです。だから、何も飾らないあなた自身の気持ちを描写すれば、それが最高の答えになるはず。
例えば、「今あなたがどんなにつらいかと思うと胸がいっぱいになって、なんとか励ましたいって思うんだけど適当な言葉が見つかりません。こんな私でごめんね。でも、私でよかったらなんでも聞くからいつでも言ってね」というような内容ではどうでしょうか?
あとは、相手の状況に応じて――つらい出来事に遭って興奮しているか激怒しているか、あるいは落ち込んでいるかヤケを起こしているか。その状況によってあなたの伝えたい中身が変わっていったとしても、基本は同じです。何も飾らないそのときのあなたの気持ちを素直に描写すれば、きっと一番の励ましになるでしょう。
その際、1つだけ心がけてほしいことがあります。相手がどんなに荒れていても、落ち込んでいても、まずは「あんなことがあったんだから、そういう気持ちになるのはわかる」という現在の相手を承認する言葉を添えることです。次いで「でも、あなたは必ずそこから抜け出せると信じてる」というエールを送ってあげましょう。
相手に少し余裕ができたら、「こんなことが本に書いてあったよ」といった形で"前向きになれる言葉"を伝えて勇気付けてあげるのも名案だと思います。とにかく重要なものは言葉よりもあなたの真心。しょせん言葉は、真心を乗せる舟に過ぎませんよ。