あなたがぶち当たっている心の壁は、親の意志でなにかを始めた人が、必ず一度は体験するもの。だからそこで、挫折感を抱いて自己嫌悪に陥ることはありませんよ。自分の目標を新たにするために、親と自分の気持ちを真に理解するときがきているのです。
もしあなたが、「お母さんは自分の夢を押し付けて、私に水泳を続けさせたいだけだ」と思っているとしたら、水泳を心の底から好きにはなれないと思います。ライバルに勝てない苦しさを、お母さんが与える苦しさのように感じて、そこから逃げ出したくなるのは当然でしょう。
でも、反発するのはちょっとやめて視点を変えてみましょう。お母さんがあなたにきびしいのは、単に自分の夢を叶えたいからではなくて、水泳を通して"娘をひとりの人間として立派に育てよう"としているからかもしれません。それが水泳の世界で生きてきた母が娘にしてあげられることだからです。
「目の前のことから逃げないで、自分に負けない人間になってほしい。そうすれば、長い人生で自分を見失わないで生きていけるから。水泳の世界でぜひそのことを学ばせたい」そんな願いがお母さんにはあるような気がします。そう考えたことはありませんか?
あなたは、物心ついたときからお母さんの夢を生きてきたかもしれませんが、いつかはお母さんから巣立って自分の道を歩き始めるときがきます。それはあなたが精神的に自立して、自分の責任で自分の人生を切り開いていく覚悟をしたときなのです。
これからあなたは、@水泳を極めることを自分自身の夢として掲げ直すか、Aまったく別の夢を追いかける心の準備として今は水泳に励むか、B今すぐ水泳をやめてこれまでのことをじっくり振り返ってみるか、それを選択するときがきています。
人生で何かを選択をする場合、後悔しないためには、後ろ向きな理由(何かから逃げたいという気持ち)ではなく、前向きな理由で(きちんと目的意識を持って)選ぶことが重要です。
例えば、@ずっと水泳を続けるなら、とことんチャレンジして自分の弱さに打ち勝とうという心意気で。A期限付きで水泳に挑むなら、生まれたときから縁のある水泳を今度こそ楽しんで幕を下ろそうという気持ちで。Bきっぱり水泳をやめるなら、今まで一生懸命指導してくれたお母さんにありったけの感謝を捧げて。
あなたは、お母さんの生き方から学びたいことがたくさんあったから、お母さんのもとに生まれてきたんですよ。まずはそのことを受け入れましょう。次に、自分はどんな人間になりたいのか、具体的にイメージしてみましょう。もし、イメージした理想の自分が今の状況に立たされたら、どんな選択をすると思いますか?
そこに、あなたが本当に望んでいる答えがあるかもしれません。そうやっていろんなことを冷静に考えたうえで、お母さんに考えたことを全部打ち明けてください。娘の成長と幸せを願わない親はいません。お母さんはきっと一番の理解者になってくれるはずですよ。
もしそこで「ちっともわかってくれない」と感じたら、そのときは、相手にわかるように伝えるあなたの努力と工夫と真心が足りないんです。相手の立場に立って、伝え方とタイミングを反省して何度でもトライしてくださいね。
そうこうするうちに、意志が固まって今ある壁を乗り越える力をつけられるから。そしてお母さんとは、お互いを認め合ういい関係を新たに築けるから。それを信じて、精一杯自分を応援しましょう。