あなたが戸惑いを感じるのは当然かもしれません。妻として、夫の一番の理解者でありたいと思っているのに、「それほどまでに人を憎むこと」に違和感があって、それが"心配の種"を生み出しているのでしょう。
彼の問題は、母親から受けた心の傷がまったく癒されていないことにあると思います。それは、彼が未だに自分の心の傷を癒すことにエネルギーを注がず、自分を傷つけた対象を憎み続けることにエネルギーを注いでいることでわかります。
母親の虐待によって「人から責められる(攻撃される)ことへの恐怖」がトラウマを生み、その結果、傷つけた相手を遠ざけて憎み続けるようになった自分を、彼は「正しい」と思い込んでいます。
彼のように「憎しみの感情を認めている」だけでは、「憎しみを受け入れている」ことにはならないんですね。ここが彼の思い違い。「受け入れる」とは「許す」ということだから。たとえ相手を許すことができなくても、その体験をした自分自身を許すことができれば、過去を受け入れることはできます。それでようやく、心の傷を乗り越えることができるのです。
しかし彼は、傷が癒されまま苦しみにあえいでいます。そのわけは、心が強い憎しみに支配されて「憎しみに生きている」と、過去に引きずられて「今を100%生きられない」からなんです。
喜びも、やすらぎも、楽しみも、あこがれも、今の自分にあってこそ意味のあるもの。それで心を満たしたくても、過去の暗い感情を捨てないと、何かにつけてそれがチクチク胸を刺して心は痛み続けます。
彼の心を憎しみから救い出すためにも、生まれてくるお子さんのためにも、彼が一日も早く心の傷を乗り越えて今に生きられるように、あなたが手助けしてあげましょう。
とはいっても、彼に何か意見すれば「妻が自分を責めた」と受け取りかねません。だから、彼を変えようとしてはいけませんよ。憎しみの感情は、あなたが「憎まないで!」といって消えるものではなく、彼自身が「生きててよかった」と感じるたびに薄らいでいくものなのです。
その「生きててよかった」と感じる世界を一緒に創りあげていくのがあなたの役目。あなたがそばにいることも、お子さんが誕生することも、彼にはかけがえのない幸せのはずです。どんな小さなことでも彼が喜びを感じた瞬間に、感謝の気持ちが芽生えてくる雰囲気を作りましょう。
それには、日頃からあなた自身があふれる感謝を口にすることなんですね。あなたの姿勢は、知らず知らず彼に影響を与えます。二人で今目の前にある幸せに感謝できるようになったら、彼は徐々に憎しみから解放されて、今に生きられるようになるでしょう。
心の傷を乗り越えるということは、「つらい体験があったからこそ、成長できた自分がいる。真の幸せに目覚めた自分がいる。人生とはありがたいものだ」という感謝の気持ちに至ることなのです。
まずはあなたが、"心配の種"ではなく"感謝の種"を自分の心に植え続ける!と誓い、感謝の気持ちをしっかり自分の中心に据えてください。それが今を生きる方法であり、幸せな家庭を築きあげる一番の近道だと思います。