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カウンセリングメッセージ

Vol.05 「一度きりの人生なのに」

From 四つ葉さん

36歳になる会社員です。両親は、私が物心ついたころから長い間家庭内別居でした。怒鳴りあいの喧嘩は日常茶飯事で、私にとって報道される殺人事件は他人事ではありませんでした。母に何度も離婚を勧めましたが、その度に『お前のためだ』と言われ、ずっと成長のない家でした。3年前に母が脳梗塞で倒れ施設に入り、先月からは父が悪性リンパ腫で入院し、私は今実家で一人暮らしをしています。両親は今になって、お互いに感謝の念を持っているようです。そして私も『親も生きるために必死だったのだ』と思えるようになったものの、人生の一番いいときをただただ両親のことを心配して過ごし、いざ先のことを考えようにも『こうしたい』というものが何もないのです。何度も仕事を変えたり、資格を取ろうと高額な資料を取り寄せたり、自己啓発的な本も山のように読みましたが、何をしても続かず自分の居場所を見つけられません。心の中は大きな虚無感でいっぱいです。

 ご両親は「当たり前にある」と思っていた健康を失って初めて、実は当たり前ではなかった貴重なもの、本当に大切にすべきものに気がついたのでしょう。それが健康と、何があってもそばにいてくれた家族の存在だったんだと思います。

 人は心から自省すると、「こんな自分にもかかわらず、そばにいてくれてありがとう」という感謝がわき起こってきます。あなたは、ご両親の中にそんな気持ちを見たから、過去の出来事を水に流そうと思ったのではありませんか?

 ところが、いざ自分が人生を立て直そうとしたら「何の準備もできていないうちに、もうこんな歳になってしまった」ということがショックで虚無感に陥った。自分の居場所とは心の居場所のこと。夢や目標を抱けない心をかかえた自分を憂いているのでしょう。

 飛び立ちたいあなたの足を引っ張っているものは、心に巣食っている2つの観念だと思います。無意識下にあるそれらを自覚して、二度と振り回されないようにしてください。

 1つは"被害者意識" です。「こんな結果になったのは私のせいじゃない」という気持ち。あなたは悪くないんですよ。でも、知らないうちに両親を加害者にして自分を被害者に仕立ててしまうと、本当はやさしい気持ちで包みたい親に対して憎しみが生まれ、その結果、あなた自身が苦しみ続けることになるんです。「両親も自分も決して責めない」というところにしっかり心を置きましょう。

 もう1つは"年齢のせいにして逃げる"気持ち。何か新しいことをしたいのに「今さら遅い」と思ってしまうのは、人と比較するために生まれる感情です。これに心を支配されると、「どうせやったってうまくいかないから、やらないほうがいい」という気になり、『こうしたい』というものが何もない今の状態を作り出します。

 この2つの意識状態をクリアすれば、あなたは人生に夢を抱いて力いっぱい飛び立てるようになりますよ。その方法をお伝えしますね。

 まず被害者意識を超えるために、『両親とは、我が子に人生の課題と試練を与える存在』という考えを受け入れましょう。つまり、子どもと深いかかわりを持つ親になる魂は、『ときには反面教師の役を担ってでも、子どもに試練を与えて心の成長を促そうとするのだ』ということです。

 たとえ、親はまったく無頓着でも、あなたが人間としてどれだけ成長したかを常に見せてくれるのが親子の関係であり、その意味で、親に対するあなたの態度は"自分の成長のバロメーター"といえるのです。

 そのことをよく肝に銘じます。そして、人生に与えられた課題を「自分が飛べる高さの飛び越えるべきハードル」ととらえ、それをどんな方法で乗り越えていくかに今は集中して知恵をしぼりましょう。

 次に、歳のせいにする気持ちですが、"あなたの常識"があなた自身を裁いていることに気づいてください。若いうちからキャリアを積んできた人や、結婚してすでに子育てをしている人と比べて「自分の人生は順調にいっていない」と決めつける癖がそう。そんな意味のない比較癖や常識は捨てることですよ。

 あなたが何歳まで生きるかはだれにもわかりません。大切なことは、いつ自分の人生が終わっても悔いのない生き方を、今日からすることなのです。人生の価値を決めるのは自分だということを忘れないで、人として大きくなることを楽しみに、一日一日を精一杯生きていきましょう。

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Last Updated: 2008/05/17