素直に気持ちを打ち明けていただき、あなたがどれほど奥様を愛されていたかが伝わってきました。胸が張り裂けそうな悲しみも、戸惑いもよくわかります。今は胸の痛みを閉じ込めようとしないで、涙が枯れるまで存分に泣いてください。
でも、その悲しみと、何もかも放棄したくなる気持ちは、どうしても区別する必要があると思います。なぜならあなたには、このつらい現実を必死で受け入れようと父親を頼りにしている2人のお子さんがいるのですから。
それは大きな責任であると同時に、生きがいのはず。奥様がしたくても叶わなかった「自分たちの子どもを立派に育て上げる」という夢を果たすのはあなたの役目ですよ。そのためにも気持ちを強く持ってください。
子どもが寂しがっている理由は2つ考えられます。1つは、母親を亡くした寂しさですが、もう1つは、寂しさに暮れる父親の姿を見る寂しさなのです。それを見るたびに、たまらない不安に襲われて心細く感じていることでしょう。
まずは、子どもを安心させ立ち直らせることに全力を注いでください。それは奥様の願いであり、それによってあなた自身も救われるからです。子どもに何か言って聞かせることは、自分自身に言い聞かせることと同じだから。
子どもたちにぜひ伝えてほしいことは、お母さんは「自分たちを置いていなくなった」のではなく「姿を変えて一生自分たちのそばにいる」ということです。これは今後に大きな影響を及ぼす真実です。子どもたちがそう信じて生きていけば、人生に何が起こっても心がゆがむことはないと思います。
そのうえで、「お母さんの魂は、心の中で呼びかければ必ず答えてくれる。だから、苦しいときは心を静かにして、お母さんに尋ねて耳を澄ませてごらん。お父さんはいつもそうしているよ」という話をしてあげてください。
体を離れた魂は大宇宙に還って、本来の姿に戻ります。愛の光になった魂はどこにでも存在するので、自分の心を愛で満たせばその人の魂と一体になれるんですね。つまり、亡くなった人の声は、自分の魂の声でもあるわけです。
私たち全員に必ず訪れる死は、その時期が早いか遅いかで幸不幸が決まるのではありません。奥様は、今回の人生における学びを終えて、今度はいとしい家族に「悲しみを乗り越える」という大きな課題を残し、自らそれを応援する側になりました。
子どもたちと楽しく奥様の思い出話をすることは、残された家族が奥様の魂に見守られてたくましく生きていくことにつながります。奥様がどれほど子どものことを愛していたかを、たくさん話して聞かせてあげてくださいね。子どもたちの癒しになるから。
そして、あなた自身は「どうして妻はこんなに早く…」とか「なぜ自分はこんなつらい思いをするんだ」という考えをもう捨てて、奥様に「お疲れさま。これまで本当にありがとう」「自分と出会ってくれて、自分を愛してくれてありがとう」という感謝の気持ちを捧げましょう。
作者不明の12行の英詩が、世界中で愛する人を亡くした人々の心をとらえ、日本では、新井満さんが訳詞作曲『千の風になって』として紹介されました。私もこの歌を聴いて涙したひとりです。原文を転載しておきます。
A THOUSAND WINDS
Do not stand at my grave and weep,
I am not there, I do not sleep.
I am a thousand winds that blow;
I am the diamond glints on snow,
I am the sunlight on ripened grain;
I am the gentle autumn's rain.
When you awake in the morning bush,
I am the swift uplifting rush
Of quiet in circled flight.
I am the soft star that shines at night.
Do not stand at my grave and cry.
I am not there; I did not die.