第九話「光透波」   第十話「止速と絶対」  


第十話

 

止速と絶対

 

前回「光透波」という観念についてお話しました。絶対至高の速度を持つエネルギーと

いうものについて多少なりとも想像がつくようになったでしょうか。

今回はその速度の想像を絶する速さを別の角度から見て見ましょう。

物理学では光の速度は一定で、その速度は一秒間に約30万キロメートルであるとして

います。速度が一定(英語でConstant)なのでその頭文字のCを取って光速を表す記号と

しています。この速度で今地球を出発した光が、例えば太陽に達するには8・5分、アン

ドロメダ星雲に達するのは150万年後だという意味になります。

これは物理学の定義です。物理学は計測可能な物質を研究対象にしています。心とか意

識とか、機能があることは分かっていても計測出来ないものは扱っていません。ところが

小田野早秧は物理学では扱っていない光が有ると想定しました。そしてその光にも種類が

あると考え、宇宙はCからCの無限乗までのあらゆる速度の光が充満した世界なのだと言

っています。そして、その中でも絶対至高の速度を持つ光を他のあらゆる光とは全く別の

属性を持った特別な光であるとして、「光透波」あるいは「止速光」と呼んでいます。

何故止まっている光が最も速いのでしょう。一点を出発した光が猛烈な速度で宇宙を一

周して戻ってくるとしたら、一番速いものは、行った瞬間に既に戻ってきている速さとい

うことになると小田野早秧は言います。あまりにも速いため、あたかも止まっているよう

なので、止速と呼んだのです。

では、止速という速さを把握する為に、ちょっと視点を変えて考えてみましょう。Cの

7乗という速度です。たったの7乗なんてたいしたことないと思うでしょう。ところが、

この速度で地球を出発した光がアンドロメダ星雲に達するには、0・000000000

00000000007秒しか掛からないのです。ゼロを数えるのが面倒くさいくらい限

りなくゼロに近い時間です。7乗でこんなに速いのですから、無限乗なんて気が遠くなる

ほどの速さだということがおぼろげながらに分かったと思います。

さて、この止速という光が特別なのは、これだけが「絶対」だということです。Cの何

乗だろうが、数値が付いている限りは相対的な速度、つまりそれよりもっと速い速度が常

にあり得る速度ということになります。絶対というのは「たった一つしかない」という意

味です。この「一つしかない」ものだけが、比較する対象を持たない絶対的存在という条

件を満たしているもの、ということになります。

私たちは普段「絶対」という言葉を深く意味も考えずに使っていると思います。これは

「絶対性」というものを私たちが理解もしていなければ体験もしないで生活しているから

だと思います。

絶対性を英語ではOneness(ワンネス)とも言います。これを実感として体験することを

「ワンネス体験」と言うことを最近私たちは新しい表現として知りましたね。この体験を

した人たちは「分離感の消滅」とか「自分が無くなってしまう感覚」というふうに表現し

ています。「一つしかない」が実感できたということなのだと思います。そしてこの絶対が

光透波なのです。