第七話「はじめての嘘」   第八話「男の脳と女の脳」  


 

第七話

はじめての嘘

 

 コトバには大きく分けて二種類あり、ひとつは人間が日常使っている言語、これには何

百種類もあります。人間の使っている言語は互いに異なることから、普遍的意味を持たな

い、つまり人間が作りあげてきた概念の集大成だとも言えます。もうひとつは絶対至高の

エネルギーの振動である「光透波」で、普遍的意味を持つものであると小田野早秧は言い

ます。光透波のエネルギーこそ生命の根源エネルギーと同質のものであり、振動数がこれ

に近いほど透明度が高く、明るく、軽いために、接していて気持ちが良いと感じるように

人間はデザインされているのだと言います。そして、生命の振動数を高く保つ為には決し

て嘘をついてはならないと教えています。嘘をつくと一挙に振動数が下がるのだそうです。

 ある小学校の女性教師から聞いた話ですが、低学年の子供が嘘をついた時には大体察知

できるが、高学年になるとなかなか分からないとのこと。嘘をつき始めの頃は態度がおど

おどしていて、視線も定まらず、姿勢も硬くなっているというように一見して分かるが、

ほんの何年かで熟練(?)し、なかなか見分けられなくなる。こうなったらもう彼女の能

力では矯正は不可能に近いとのこと。そして彼女は、つけ加えた。

「最初の嘘を発見する立場に私が居合わせたら、的確な処置をすることが出来、そうすれ

ばその子は一生嘘をつかずに生きていける人になれるのに」と。

彼女の言う的確な処置とは第一に、決して咎めないことだと言う。嘘をつく子供の場合、

親を見ると叱ったり咎めたりするばかりで褒めるというほうはあまりしない。「認められた

い、褒められたい」という渇望と欲求不満が生まれると同時に、嫌われたり怒られたりす

ることをして見つかったら大変だという恐れも生まれます。そして叱られたくないばかり

に嘘をつく。つけばつくほど熟練するのは当然の成り行きで、捕まらなくなればそれこそ

「ついた方が得」ということになって、その行動は強化されることになります。

嘘とは言ったことと実際とが異なる状態、つまり矛盾です。脳の話になりますが、大脳

右半球の側先端に近い場所に小さな豆ほどの、言うなれば「嘘センサー」があるそうです。

V.S.ラマチャンドラン博士という神経生理学者の著書※の中に、事故で脳の右半球に損傷

をきたした患者の中に、内的矛盾に全く気がつかなくなった人たちが多数いたのに対し、

左脳に損傷を来した患者にはそれが見られなかったところから、いろいろ研究して特定で

きたのが、このセンサーだったとあります。普通の人間の場合センサーが矛盾を感知する

と、情動が働き、いわゆる後ろめたい気持ちになるため、態度がおどおどしたり、顔が赤

くなったり、声がうわずったりするような反応が出るしくみになっているのだそう。とこ

ろが事故によらなくてもこのセンサーが麻痺した人がいて、嘘発見器にかけても探知でき

ないほどだと言います。犯罪者の多くはこういう脳の器質的欠陥を持っているということ

が最近明らかになってきました。

日本には「嘘つきは泥棒の始まり」ということわざがあります。言い得て妙ですね。こ

れが、小さな子供がついた初期の嘘の処理を誤らないことで大幅に回避できるのなら素晴

らしいことだと思います。

 

  『脳の中の幽霊』V.S.ラマチャンドラン、サンドラ ブレイクスリー著。角川書店。

山下篤子訳。一九九九年