第一話「コミュニケーション術」   第二話「話せば楽になる」  


光透波学考

 

ここにご紹介する12のエッセイは、2006年の4月号から2007年の3月号まで

の一年間に渡り、中西研二さんが創始者である「いやしの村」の機関誌に連載されていた

ものです。

 

第一話

コミュニケーション術

 

インドの聖者カルキ・バガヴァンは「人生とは人間関係です」と言っていますが、人間

関係の基盤はコミュニケーションではないでしょうか。そしてコミュニケーションに使わ

れている道具は言葉です。

人生は多事多難なもののようですが、多くの場合困難の根本原因は人間関係が円滑でな

いところにあるのではないかと思います。社会生活で必要不可欠な要素はコミュニケーシ

ョンです。日本語では「意思の疎通」と言うのでしょうが、ピッタリ当てはまらないよう

で、英語の方が流通してしまったようです。原因は従来の日本ではあまり注目されていな

かった技能だからかもしれません。西欧の文化では能弁であることが偉人賢人の資格の一

つで、ギリシャ、ローマ時代から演説が国家の命運を左右するほどの影響力を発揮してき

ました。これに対し日本では、無口、あるいは不言実行の人がむしろ尊敬されていました。

日本のような単一民族国家ではそれで通用したからでしょう。まあ良し悪しは別問題で、

ここではコミュニケーションの技術について考えて見ましょう。

うまいコミュニケーションの二大要素は、相手の話をよく聞くということと明確に自己

表現するということです。別に流暢である必要はないし、口数の多寡も関係ないと思いま

す。大切なのは明確さです。

人がどのくらい相手の話を把握しているかがよく分かるゲームがあります。最初の人が

次の人にあるメッセージを耳打ちし、次の人がその次にと伝言して行き、最後の人がメッ

セージを声に出して言い、初めのものと比べるのです。全く違うこと請け合いです。

相手の話をよく聞く為に必要なのは次に自分が話すことを考えないことです。相手の話

次第で変わってしまう話を先に考えている必要はありません。ある意味で「自分を後回し

にする」という姿勢をとっているとよく聞けます。これは自分にも言っています。よく忘

れるもので。次に大切なのは確認です。

「今のはよく分からなかったけれどどういう意味?」と聞き正すと、しばしば驚くほど

の誤解があることを発見するものです。

自己表現で一番大切なのは何だと思いますか。ちょっと意外かもしれませんが、正直で

あることです。どんなに言葉数が少なくても自分が心から思っていることを話すと説得力

があります。技術的には、自分の考えの整理整頓が必要です。話したいことが前後の脈絡

もなくごっちゃになったままでは困ります。一時に一つずつ(口は一つ、頭も一つしかな

いので)、順序よく(5WH覚えていますか?)、なるべく枝葉を少なく(行ったっきり

帰れなくなる)するといいです。語彙もある程度関係します。「知らない言葉で話すことは

できない」からです。

言った、聞かない、言わない、聞いたの水掛け論というのは以上の基本ルールを守って

いれば起こりません。