「辛」― 人間は苦労する為に生きている    



囲


 囲みという字は二つに分けると、囗に井となります。囗もカコミと読めます。次に、井という字を見ると普通は井戸をまず連想するのではないでしょうか。ところが、他の字と熟語を成すと、読み音が変わるのです。天井(テンジョウ)と市井(シセイ)です。

 井戸は掘り下げるものです。天井は見上げるもの。市井とは人間同士が横の関係で切磋琢磨している場所です。つまり、下向き、上向き、横並びと三種類の方向性を意味する熟語が井を使うことで出来上がっていて、しかも読み音がそれぞれ異なっているということです。

 囗/カコミという「場」に三つの方向性を持った井(天鏡図の中のイという音の欄には意という字もあります)があるという字を幾何的に描いてみましょう。下のようになります。

ご覧のように場が九分割されます。この形を見た時にまず連想したものは魔方陣です。 魔方陣は神秘学的にいろいろと意味深いもののようです。この謎が解けたら宇宙の神秘の多くが分かると言われてもいるそうです。

 九分割されたそれぞれの箱に1から9までの原数を入れ、縦横斜め、どの列の合計数も15になるようにすると、次のようになります。ここまでは普通の魔方陣です。ところが、これに新たなる展開をさせたのが小田野先生です。  その前にこの九個の箱の中心にある箱を見てください。5という数値が入っていますが

これが5を通るどの列でも共通に使われていて、15という合計数を成立させています。視点を変えて5を外せば10になるという見方もできます。和数字ではヒフミヨイムナヤコトの十です。

 さて、ご存知のように日本の五十音表にはアカサタナハマヤラワの十行が入っていますが、そのそれぞれの音に文字を入れたものが天鏡図です。ちなみに日本語に使われている濁音と半濁音とそれに口を開かないで発音する「ン」を加えて作った天鏡全図は15行あります。清音だけだと10行です。

 この天鏡図に魔方陣を重ねてみたのが小田野先生です。

 五行目はナニヌネノの行ですが、その真ん中の音がヌで、これに「奴」という字が当てられています。奴とは人間という意味です。

 人間を意味する奴の箱に5という数値が入っていますが、このナニヌネノの行が五十音表の5番目にあるのです。そして、その行は和数字の読み音で「イ」なのです。ヒフミヨイムナヤコトの5番目の「イ」です。奴をヤッコと読み、これに「八光」という字を当てられた先生は、「人間は存在の中心から八方向に光を放っているものなのよね。本来は」と言われていました。

 生きる意味を掘り下げ(井戸)、絶望したり希望したりすると神仏を思って天を見上げ(天井)、人間社会で切磋琢磨しつつ生きる(市井)という姿勢は他の生物は持っていません。そうするには思考するための言葉が必要だからです。

 奴(人間)のみが三つの方向性を持った意識で生きているのです。

 カコミ(加光実)という光が加わっている実相という場(宇宙)で意識(イ、意、井、囲)を持って生きているのが人間というものです。その周囲にはご覧のような字がありますが、その展開はいずれそのうちに考察していこうと思います。

2005/06/17