「辛」― 人間は苦労する為に生きている    



「辛」― 人間は苦労する為に生きている

「辛」― 人間は苦労する為に生きている


 人生とは苦労の連続だと思って生きている人も多いと思います。この場合、苦労は辛い、嫌だ、という意味で使っているのではないでしょうか。苦労が素晴らしい、生きがいだと思っている人は非常に稀だと思います。

 私の師小田野早秧は「人間は苦労を稼いで生きている」と言われました。稼ぐという意味は、せっせと努力するということです。普通人間は何か好ましい状況を招く為にせっせと努力します。月給が上がるように、誰かに愛されるように、社会的に認めてもらえるように、というようにです。まずもって苦労を招きたいと思う人などいないでしょう。

 辛いことを避けたいというのは本能的なものです。苦労が辛い人は避けます。辛くない人だから避けないわけです。違いは苦労に対する認識だけです。

 そこで、辛いという字をじっくり見てみました。立つに十です。十はトと読めますから、トが立つと取れます。天鏡のトの欄には「透」と「答」という字が入っています。曖昧ではなく、透明な答ですから明白な答です。明白な答が立つ。それを得るのには苦労して辛い思いをする必要があるという風に思えました。

 というのも、昨年12月にインドの賢者に、「悟りの第一段階は苦悩です」と教えられたからです。苦悩を知らない人は「道」を求めることはしないからだそうです。

 「求めよ、さらば与えられん」です。人生とは何ぞや、とか、何でこんなに辛い思いばかりさせられるのだろう、という疑問の答を求める前提に苦労するという体験があったわけです。

 この辛いという字に一文字加えると素晴らしい字が出来ます。一、つまり絶対という意味ですが、これを加えると、下のようになります。

 何と、「幸」となるのです。始め(ハジメ、一)、つまり第一に辛い体験があって、それから幸せになるとも読み解けますし。絶対に辛い思いを味わったら幸せになるとも読み解けます。

 あなたはどうですか。苦労は辛いですか。それとも面白いですか。

2005/06/17