「合理」     字分け「精神」


 

合理

 

 先日あるビルの入り口のドアを押して入ろうとしている人の後ろに立っていた。押してもドアが開かない。もう一度押したがやはり開かない。そこでその人は肩を使って体全体でドアを押した。それでも開かない。それからドアの取手の上部に書いてある、「引く」という表示に気がついた。「あっ」と言ってドアを引いて中に入っていった。

 いつ気がつくのかと思いながらずっと後ろに立っている間に考えたのは、人間はこうと思い込んだらなかなか他の選択肢を見ようとしない傾向を持っているということだった。一旦何か思い込んだら他の側面から状況を見ることが出来なくなることを自覚していないと人生は思惑はずれの失敗の連続となる。人間は大体においてあまり合理的にはできていないようだ。


 合理という意味を広辞苑では筆頭に、「道理にかなっていること」と書いてある。今度は、道理を調べると、「物事のそうあるべき理儀、すじみち。ことわり」とある。

 要するに、ことわり(漢字では理と書く)、すなわち物事の筋道に合っている、ということが合理という意味になる。他にも能率的とか、むだなく要領がよいという意味もあるが、主として筋道が通っているというのが合理の第一の条件。また「前提とされたことに対して筋道が立っていること」というのも合理の条件。


 例えば、六ヶ所村の住民が再処理工場の本格的稼動に反対しないのは、それにより大量の雇用が発生し、住民の生活が潤うから、という考え。これが合理的かどうか考えてみよう。
 生活が潤うのは確かかもしれないけれど、潤うべき生活は命あってのものじゃないかな、とチラっとは頭をかすめるが、いえいえ、と打ち消す。空から降ってくる目に見えない放射能の影響は、誰かさん(この場合権威ある立場の人なら誰でもいい)が安全性を保証(保証という意味は実に広大にして曖昧だが)してくれているし、多分大丈夫だろう。多分といえば、宝くじだって、買えば多分当たるだろうから、買おう。だってやってみなきゃ分からないじゃん(やってみて、思惑はずれでも取り返しのつくこととつかないことってあるのだぞ)。


 この場合は、当事者にとって「命よりお金が大切」という前提に沿ってならば筋道が通っている行為となるので、合理的だ。但し、前提が正しいかどうかは別問題。前提が正しいとはいえないと思うのは、命が無くなったらお金は使えないので、前提には内在的矛盾があるからだ。

 以下は2006年12月31日現在の世界の主要各国の原発基数


世界の原発基数は米国が103、フランスが59、日本が55、ロシアが27、ドイツが17、韓国20、英国19、カナダ18、ドイツが17、スエーデン10、中国が9基である。他の国々の原発を合わせると、計429基。建設中が計35基。そして建設計画中が47基。合計511基。 http://www.jaif.or.jp/ja/joho/press_kit2007-sekai.pdf

                
                
                
                
                

 米国もすでに原発増強計画を発表しているが、中国の計画はこれを上回るもので、今後20年間に100万KW級原発を120基建設することになり、実現すれば、米国にとって代わって世界最大の原発大国となるそう。これに伴い、燃料のウランの国際的な争奪戦は一段と激しくなる。すでに、オーストラリアでのウラン開発には大々的に中国が乗り出しているそう。

 青森県にある六ヶ所村には使用済み核燃料再処理工場がある。現在、再処理工場は世界で2つしかないそう。フランスと日本。イギリスは事故が起こって封鎖された。世界で二つしかない再処理工場のうち1つが日本にある。今それが、稼動しようとしている。少々の反対ではそれを押し切ってもやる気でいる日本の政治事情がある。
もしそうなったら、500基もの原発の廃棄する核燃料の滓を日本とフランスで処理することになる。もしフランスが何かの事情でイギリスのように封鎖したら、日本だけで処理することになるのかな。誰も放射能で水や空気が汚染される危険性がある工場を自分の国に作りたいとは思わないのではないだろうか。国民の猛反対を押し切っても自分の政治生命を賭して建設を推進する政治家がどこの国に何人いるだろうか。私には分からないが、多分そんなにいないのではないだろうか。だから原発を持っているあるいは持とうとしている国が38もあるのに、処理工場は2つしかないのではないか。日本がやらないと決めたらフランスもそのうち止めるのじゃないかな。止める気がなくても、何か事故が起きたら止めざる得なくなるかもしれない。そうしたら折角(?)今建設中のものも、計画中のものも、現在稼動中のものも、みんな稼動停止しなければならなくなる。

それって困るの?どう困るの?どうしても困ることなの?

 これは、ドアは押すもので、決して引くものではないと思い込んでいるのにちょっと似ている。原発ってなければいけないの?原発がなければどうしても生きていけない。電気エネルギーの需要は原発なしではまかなえない。これって本当なの?全く無しでもやっていける案を人類が智恵を合わせて考えたら何とかなるんじゃないの?

 ともかく失うものと得られるものとをよくよく秤にかけて、よ〜〜く考えてみよう。命とお金、健康と利便性、人類にとっての利便性と他の全生命、健全で汚染のない地球とエネルギー不足、などなどを秤にかけてみよう。 合理的に。


命波を学ぶ仲間の八田光典さんが、昨年秋に送ってくれたメールに核の字分けがありました。 「核」という字を分けると、「木」に「亥」となります。八田さんが言うには、


亥(イノシシ)に木(気)が付いたら核


 昨年は亥(イノシシ)年だった。十二支の終わりの年。子から新しく次の一周が始まる。2008年、平成20年、亥の終わった翌年の子の年。核を考えないと核が何かに気がつかない。人間は核をいじってはいけないのではないか。処理できないものを作ってはいけないのではないか。そういうことを思わされる時なのだと感じました。

2008/03/17