2003年 あけましておめでとうございます。     遊びの達人


2003年 あけましておめでとうございます。

 2003年、21世紀という言葉も少しマンネリになってきました。新しい年にはよく願を立てますが、それが2月になるともうマンネリになるのと似ています。初心を忘れないようにするのは難しいということなのでしょう。

 毎日が新鮮で驚異と喜びに満ちていた子供時代もありましたが、もうすっかりワクワクする方法を忘れてしまいました。今のような年齢になるとワクワクするのには技術が要るようになります。

 毎日の生活に追われて頭が心配事でいっぱいになっていると、とてもじゃないがワクワクなどできません。知人のある医者が、現代病の原因の一つは頭の疲れだと言っていました。どういうことが頭の疲れの原因になるのかというと、「出口のない箱の中でぐるぐる駆け回っているだけのような考えに取り付かれてそこから逃れる術がない状態」と形容していました。解決の糸口さえあればそれがどんなに困難なことでも一生懸命つとめている間は空回りではないので頭はそれほど疲れないのだそうです。

 そこで以前父親から教わった技術を思い出しました。どうしても穴が見つからない箱の中に捕らえられてしまったら、外にでる方法はただ一つ。それは精神的に気絶してしまうことだと。武士道の教書『葉隠れ』には「武士道とは死ぬことと見つけたり」とありますが、これに似た考え方だと思います。助かろうとあがくからかえって溺れるのだとも言えます。

 全部手放して諦めてしまうことが極意だと思います。手放すのは物だけでなく、既成概念や思い込みやその他ありとあらゆる雑多な知識です。整理されてもいないし、どう使ってもいいか用途も判らない半端な知識にしがみついていても助からなかったのだから、綺麗さっぱり捨ててしまうことです。父の「精神的に気絶してしまう」ことと言うのはそういう意味だったのだろうと思います。

 手放してしまうというのは勇気の要ることですが、手に入れることと違い誰にでもできることでもあります。「諦めは言葉の帝王」とは小田野先生の教えです。この場合の言葉とは人間の思考のことです。
人間の思考の帝王、すなわち最高の地位を占めるものは諦めであると字分けできます。

2003/01/02