「心のツインタワー逝く」 「さようなら 太母さん」


心のツインタワー逝く

さようなら 小田野先生

 「嘘をついてはいけませんよ」、「自惚れてはいけませんよ」と常に戒められてきたこの六年間でした。先生のお宅をお訪ねしては命の道をご教授いただく幸運に恵まれ、この頃ようやっと、先生の到達された真理の大塔の土台石あたりを把握でき始めたと思いだしていたので、余計自惚れてはいけないというお諭しが繁くなっていたのでしょう。

 この二つを座右の銘として、いかなる苦境に陥っても、決して誤魔化したり人様に迷惑をかけないように心を引き締めて耐え忍ぶことを学ばせていただきました。実際その二つを守っていれば活路を見出すことができたのです。

 もう一つ大切な教えは、責任をとって生きなさいということでした。命の生みの親である宇宙という真空は一度も権利など主張したことはない。あらゆる創造物をひたすら育み続けているだけの責任生活を送っているではないか。そしてその恩愛は絶対の平等であって、誰かだけ特別に命のエネルギーを大量に頂いているのではないとも教えて下さいました。先生の教えは平易で簡明でした。素直な心を持っていればすぐにも解ることを、へそ曲がりの私は随分と遠回りして少しずつ覚えていきました。でもそのおかげで把握したことだけは決して忘れないのです。随分と失礼なことを申し上げたり、居眠りしたりもしましたが、そのままの私を受け入れていて下さいました。人間にとって最も辛い批判者はその人自身だと思います。その上さらに他人が咎めだてする必要などないのです。徹底的に合理主義の先生はそういう無駄はなさらなかったわけです。

 一人一人個性の違う弟子にとって最も適切な教え方は一種類なので、個人指導の多かった先生で、あまり弟子同士は知り合う機会がありませんでしたが、葬儀の席でほぼ全員が知り合いになり、先生の教えを語り合い、学びあうことができました。これからは皆が協力して先生の教えを多くの人に伝えていく務めを担ったとも感じています。

 あまりにも多くの思い出が渦巻いていて、すぐにはまとまりもつきませんが、ともかく、先生ありがとうございました。これからも天に瞬いていらっしゃる叡智の星として別のところからよろしくご指導下さい。


2001/12/05 静流