石頭という表現がありますが、脳みそが固まっている感じをいったのでしょうね。

　辞書で引くと、「石のように堅い頭」に並んで、「融通がきかず、ものわかりが悪いこと」とあります。

　多分後者の石頭人間は、体まで固くなっているような気がします。というのも、心身は一体なので、こだわってかたくなになる精神構造は、体中の細胞までもこわばらせてしまうから…。きっと固まってくれば、気の流れも血の流れもとどこおってつらいことでしょう。

　これだけ世の中が移り変わろうとしている激動の時代ですから、石頭人間は取り残される恐れがあります。そうなると苦しいのは本人です。自分が変われなければ回りからは次第に必要とされなくなっていくでしょうから…。

　ここまで読んだあなたは、頑固親父は想像しても"私は石頭ではない"と思ったかもしれませんね。"だって、ものわかり悪くないもん"と。では、納得したことをすぐ行動に示していますか？分かっているけれどしていないことは、多くありませんか？

　例えば、「自分と考え方の違う人のことを理解する」と決めても、「あいつのせいだ」とか「相手が悪い」と感じて許すことができなかったり根に持っているうちは、心身は固まったままです。

　また、自分に対してはどうですか？「他人の目を恐れて自己主張しないのはストレスになるからやめよう」は、守られていますか？あるいは、「心身が疲れているから労わろう」は、どのくらい実行できていますか？

　そろそろ自分自身へ融通を効かせましょう。あなたの望まない潜在石頭のまま、不本意な生活を続けるのはやめるときがきています。その石頭人間を続けさせているのは惰性と打算と恐れです。

　この辺で本来の自分に帰りませんか？自分は石頭の対極にある水であることを、あなたが思い出せばいいのです。人間の本質は、水のようなものだということを―。

　私たちは、緩んでいれば水になれます。サラサラと高い方から低い方へ向かってただ流れていく水です。川をイメージしてもいいでしょう。川の流れは人生にとてもよく似ていて、たくさんのことを語らずして教えてくれます。

　川の水は、底がデコボコでもドロドロでもジャリジャリでも、ただその境遇に身を任せて流れていきます。障害物があれば、自然によけて新たな道を探して流れ、そして、過ぎた瞬間からもう障害物のことは忘れているかのようです。

　もし、何かに行く手をはばまれてせき止められても、時が来て水が満ち溢れ、再び流れ出すまでジタバタしないでじっと待っています。ただ、その時をそこで生きています。 「これでは人生つまらない」と思わないでください。水は"導かれるままにひたすら流れ続ける"という本分を果たしているから大満足なのです。

　私たちは誰も、自分に満足して生きたいと願っています。にもかかわらず不満がいっぱいなのは、それを他人やいいことに頼って得ようとするからですね。人は本分に気づいて生きていけば、出来事に振り回されないで、自分が生きる満足度をいつも悠々と保つことができます。

　別の表現をするなら、DoingではなくてBeingこそが大切です。自分が"何をなすか"ではなく、自分は常に "何者でいるか"です。私は、水になろう＝無為自然がいいと思います。

　私たちは、これまであまりに多くの時間を何をすれば認められるかということに費やしてきました。それには、社会が在り方／Beingではなくてやり方／Doingばかりを評価してきた背景があるからでしょう。

　でも、もうこれ以上惰性と打算と恐れに翻弄されて生きたくないとあなたが思うのなら、自分が何かを選択するときに、自分は何者でいたいのかをまず考えるようにすればいいんですね。

　具体的には、何か意志決定をする際に、「この選択をする自分が好きか」、もう少し突っ込んで「自分がその自分を尊敬できるか」をチェックする態度と客観性を忘れないようにすることです。

　ひとつひとつをそうやって決断しながら生きていくと、自分を愛し応援することができるようになります。その結果、自らの人生に満足を得るというわけです。

　あなたの生きる価値は、Doingの前にBeingにある。その在り方に合ったやり方を探す姿勢をくずさなければ、この先どんなことに遭遇しても、あなたは環境や状況に則して生きていく水になれます。回りに調和しながら、自分の道（Be）を自分のペース（Do）で流れていけるという意味です。私たちがいがみ合う必要など最初からないのですから。

　そして、水はいずれ海に出てひとつになります。いずれこの世を去って、ひとつに帰る人間に似ていると思いませんか？